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「ねぇ文月さん」
口調に反して、そしてクラスメイトに放つにはあまりに強めの力で、ズンと肩を突っつかれた。
犯人は当然スナくんであるのだが、思ったよりなんかこう、意思を感じる指ツンだ。
「ごめんスナくんそこたぶんなんかの秘孔だ」
「あー、産まれ持った整体の才能かも」
「わかりづらいかもしれないけど、私が今言ったのは的確に秘孔を突いてきたことの賛辞じゃなくて、オブラート五重に包んだ謝罪の要求なんだ」
「へぇー」
「平然だねぇ」
席替えから日を跨いだ金曜日、昼休みを迎えてすぐのことだった。
号令の後、お弁当箱の入った手さげを取ろうとしたとき、何の前触れもなく。
「そういえばインスタ知らなかったなって。教えて」
「あ、うん。いいよ。スナくんも教えてね」
「嫌かも」
「『嫌かも』？！」
いつも通りなんやかんやからかわれつつ、インスタのQRコードを見せ合う。
スナくんのアカウントは投稿が少なく、小ざっぱりしていた。
これは完全にスナくんに対する偏見だけど、しばらくはチマチマ投稿続けるけどある日突然消してそうなイメージがある。
「あ、鍵垢なんだ」
「うん、まあ。ところでこのアイコン何？」
「先輩が描いた俺」
「ん、あー……確かに似てる」
スナくんは、いいでしょ、と言いながら少しだけ口角を上げて自慢げに見せつけてくる。なんだかレアな表情だ。
「ていうか文月さん、『角名』のイントネーション面白いね」
「え？うそ。……スナ？」
「角名」
スナくんがイントネーションを指で上げ下げしているのを見て、同じ動きをなぞって、正しい音を頭の中で何度か繰り返す。が、しっくり来ない。
「ス……スナ。ん？……ス、角名」
「それ」
「あ、角名くん？」
「うん、そう。なんかずっと気になってた」
「えっごめん。亀田先生がスナって呼んでるから、スナだと思ってた」
「あの先生も大概訛りっぽいからね。文月さんってどこの出身なの？」
「静岡だよ」
「あ、ぽい」
その角名くんの言葉に一瞬思考が止まって、それから、力が抜けるみたいに笑った。
なんだか変に可笑しくて、理由もわからないまま、そのまま背中を丸める。
「ぽいかなぁ」
「……笑いどころだった？」
「ううん。や、初めて言われた、から。ふふふ」
角名くんは私がひとしきり笑うのを待ってくれて、一応褒め言葉ね、と付け足した。
なんだかそれすら理由もなく可笑しくて、また笑えてきた。
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エコ - かなけんさん» 感想ありがとうございます。メチャクチャに嬉しいのですが、この感動を言葉に表すに足る語彙力がないので、うまく伝えられなくて申し訳ないですが、本当に本当に嬉しいです。スクショしてにやにやするぐらいです。遅筆ではありますが、これからもよろしくお願いします。 (2022年3月28日 23時) (
レス) id: 3464e68ae3 (このIDを非表示/違反報告)
かなけん(プロフ) - めっちゃ好きです！！毎回更新されるの楽しみすぎます！！💞 (2022年3月27日 22時) (レス) @page19 id: 4ee55b59ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エコ | 作成日時：2022年3月13日 23時
