77「黒き羽」 ページ8
トウマside
僕たちは黙り込んだまま、ただ時間だけが過ぎていく。
そんな中で気が付けば後ろに真魔がいることに気づいた。
『おい…、お前…!』
それに気づいたのは目の前の誰かが僕のほうをみて目を見開きながら声を上げたから。
が、時すでに遅しといっても過言じゃない。もう、間に合わない。僕はそう確信している。
不思議と恐怖なんてない。何故か、安心感がある。
自分でも不思議で仕方がない。
『アブねぇ…!!』
その声を上げた時には、もう既に誰かは僕の前にいなかった。
急いで振り向けば、先ほどまでまとっていた黒いマントがない。代わりにあるのは黒い翼。
手には短刀。二本の角が生えている。
一瞬にして、誰かは真魔を倒してしまった。
手の短刀で、切り裂いて。
真魔を倒せば、着地をした。
「大丈夫ですか…!?」
自然と、僕はこの誰かが悪い人物には思えないと感じている。
一見悪い人物そうに見えるが、中身はそうじゃないと思うのだ。
澄朧くんみたいに…!
『あァ。まぁな、無意識に手が出ちまっただけだし』
そういいながら、黒い翼をマントに戻した。
それを見ながら僕は「すごいですね」と言う。
『これは友の形見なのさ』
もしかしたら聞いてはいけないことだったのかもしれない。
一瞬そんな考えがよぎったが、空を見つめる目は澄み渡っているようで、何だか一安心する。
『もう一度、会いたい』
その呟いた言葉は嘘偽りのない言葉だろう。
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