素直になれない僕たちは。 (ページ6)

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75「記憶というのは」ページ6

記憶というのは実に厄介なものだ。
それによって生き方とかを変えさせられてしまう。いっそ、忘れることが出来たらいいのにとも思ってしまう。が…、嫌な記憶というものは中々にタチの悪いものだからそう簡単に忘れることなんて出来やしない。

〈君は…、何者なのさ〉

『お前には関係ないだろう』

〈関係なくなんてないから！教えてよ〉

確かに、教えるべきである人物なのかもしれない。
が、俺自身の過去に関して話すのは嫌なのである。

『いくらお前に言われたところで、俺はお前の質問に答える気なんてない』

あの記憶に関してはいくら問い詰められたところで話す気なんて微塵もない。
が、忘れられもしない。

『結局は俺もお前も同じなんだよなァ』

これだけは語るべきなのだ。
『本来の自分』に知ってもらわなきゃならない。

〈どういうこと…？〉

『大切なものを失って、こうなっちまっただけなのさ。元からこんなヤツじゃない』

〈そうなんだ…〉

『はっきりとした記憶も失って、曖昧とした記憶の中お前の人格と成り代わったわけだから捻くれちまってるけどよ』

楽しかったはずの記憶は失われ、嫌な記憶のみが心の奥底に残る。
まったく、この世の中は理不尽に出来たものだと思う。

気づけばこんなところに呼び出され訳もわからないまま。

だけど、これは自分が望んだもののような…、気がする_____。