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照れ笑いをする翼に、私も質問を投げかける。
「翼は将来どうするの?やっぱ走るつもり?」
「…大学でサークルに入るとしても、陸上を生業にする気はないよ」
これまた意外。スカウトが来ていたらしいのだが、と尋ねるが、それもすぐお断りしたらしい。
何がこの人にそう答えさせたのかな。
知りたかったけど、流石に踏み込みすぎは良くない。
そう考えたが、翼は何がしたいのか、そして何が彼にその夢を与えたのかを教えてくれた。
「…俺の実家、フォトスタジオなんだ。モデルさんも来るくらいのな」
「モデルさんって、雑誌に出るような人達?」
「そう」
彼は天井を仰ぎ見ながら話を続けた。
「話を聞いてると、好きな服での撮影が一番楽しいみたい。ほぼ全員がオシャレ好きなんだよ」
目を輝かせた彼は、さらに続けた。私はひたすら黙って、話を聞くことに専念する。
「その人たちの笑顔を見て、オシャレの楽しさを知ってさ。気づけば、大好きになってた」
「つまりアンタの夢はモデルさんってこと…?」
「いや、違う。着ていて楽しい服を作るデザイナーになりたいと思ってるんだ」
彼の笑顔は、これまでに無いくらい晴れやかだ。本当にデザイナーになりたいんだと見て取れる。
大丈夫よ。貴方ならなれる。
ド直球な応援するなんて、気恥ずかしかったから、
「翼の作った服、着れるのかしら」
からかってるみたいな言い方しかできない。
翼は眉間にシワを寄せる。
「絶対着せてやるから覚えとけ!」
が、すぐいつものように満面の笑みを見せてくれた。
どうやら真意が届いたようでよかった。
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作者名:PAYA☆ | 作成日時:2018年4月20日 23時