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建てつけの悪いドアを開けて、一定の距離を保って向かい合う二人を視界に入れる。
Aと天海だった。昨日の男子も彼で間違いなさそうだ。
「…翼」
「どこから聞いてた？」
天海は、涙を隠せていないAとは対照的にニヤニヤ笑っていた。
コイツ…見透かしてやがる。ということで、言い訳はできそうにない。
「『私だって、言えるもんなら言いたいわよ！』辺りからです…」
「うわぁ…マジか……」
目をそらしつつ答えると、今度は「やらかした」とばかりに額を抑える。コロコロと忙しい男だ。
Aはというと、ただぽかんとしていた。ろくなリアクションはなさそう。
生憎だが、俺にはこの二人のテンションの差にツッコミを入れるほどの余裕なんてない。
それより、Aには言わなければならないことがある。それは今の俺にとって、何よりも大事なセリフだ。
深呼吸をして、思い切り高鳴った鼓動を悟られる前に告げた。
この際、引かれても構わない。伝わればそれでいい。
「避けたくないなら避けんな！気にするだろ！」
この上なくカッコ悪い。でも、性格上背伸びも嫌だ。だから本音を叫んだ。それだけだ。
Aの目に浮かぶ涙を指で拭うと、いつも挑発してくるような憎たらしい声で
「最後のがなければ満点なのにね」
と返す。まだ目は赤かったけど、彼女は確かに笑っていた。
――Aの笑顔、久しぶりに見たな。
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作者名：PAYA☆ | 作成日時：2018年4月20日 23時
