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こんな感じで、これ以上は何のハプニングもなく、文化祭は終わった。残るは後夜祭のみ。
みんなが大きな焚き火を囲って踊っているのを、私は少し離れたところで見ていた。
翼はというと、誰かに呼ばれてそっちに行っている。
…暇だ。踊る相手なんて翼しか考えてないから、探す理由がない。そんな私に声をかける人が。
「よっ、久しぶりだね」
「えっ、宇野くんじゃない。女の子達と踊ってたんじゃないの?」
本当に久々だ。私は宇野くんと話してないから。
「失礼な!もうお遊びの恋愛からは卒業しましたからー!」
むーっと膨れっ面を作り、「心外だ」と繰り返している。変わらず明るい方でいらっしゃる…。
分からない方のために、宇野くんのことを軽く説明しよう。彼はチャラ男で、こう見えて私の元カレ。
別れて以来、顔を合わせることすらなかった。
その元カレくんが、珍しく真顔になる。
「……あのさ、Aちゃん」
「ん?」
真剣すぎる声に、思わず息を呑んだ。
「本気の恋ができるようになったら応援してくれるって、いつだか言ってくれたよね」
「え?んー…あぁ、言ってたね。…ってことは、ま、まさか!」
宇野くんはこくりと頷き、頬を赤く染める。どうやら、そのまさからしい。
「それで、好きな人なんだけど」
「うんうん!知ってる人なら応援するし手助けもするわよ!」
「そう?じゃあ、言っちゃおうかなー」
そう言った後の宇野くんは、いつになく真面目な顔と声で、あることを言った。勘のいい人は、おそらく彼の言うことを察してるかもしれない。
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「もう一回だけでいい。俺、Aちゃんとやり直したいんだ」
彼の目は、まっすぐ私を捉えていた。
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作者名:PAYA☆ | 作成日時:2018年4月20日 23時