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「佐伯真琴くん。いい名前だね」
「急になんだよ」
「君は誰にも信じてもらえなかったんだろう?なら、僕たちが信じてみてもいいかい?」
「…何言ってんだよ。ウザイ臭え」
「胡散臭いかあ。んーそう思っちゃうかもな」
手柄を横取りした警察。自分がいた世界とは全く異なる世界にいる、なんて思っているだろう。
でも、そんなことはない。
「僕たち警察はね、光を当てるために自ら闇へ飛び込む集団なんだよ。その点では、君と一緒だと思うんだ」
「…でも俺は復讐のためで、あんたらは国の危機を救うため。規模がちげえよ」
「規模が違っても目標は同じさ。君は教祖を殺害して組織壊滅を目論んだ。僕たち警察は別の手段で組織壊滅を目論んでいる」
そこまで言うと彼の少し苛立った表情が、閃きの表情に変わった。
どうやら俺の言いたいことが分かったらしい。計画を立てれるあたり、結構優秀かもしれない。
「じゃあ俺たちは正義に加担していたってことか!」
「ああ!そういうことだよ佐伯真琴くん!」
彼は犯罪者だが、組織の反乱分子だ。これを利用しない手はない。
それに、押収したスマホには組織に関する複数のファイルが発見された。多少のハッキングはできるらしい。
「君はハッキングが出来るらしいね。始めてどれくらい?」
「1ヶ月ちょっとだ。先輩に教えてもらった。でも、実践はファイルを盗んだ1回だけ」
1ヶ月でこれだけ深く探れるだと?
このファイルは見たところ教祖のスケジュールだった。そんなの側近しか管理しないはずだ。
俺は思わぬ宝を引き当ててしまったかもしれない。
「君は優秀だ。もっとその才能を正義のために使ってくれないか?君の周りのためにも、日本のためにも」
「俺が役にたつってこと?」
「ああ。僕には君が必要だ」
彼は目から滝のように涙を流した。
この感動はいつになっても忘れられない。
俺はそれを知っているから、同じことができるんだ。
「まずは君のことを知りたいな。教えてくれる?」
「オベコースだぜ!」
「Of courseね…」
これが続くのは少しごめんだがな。
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作者名:セメント紅井 | 作成日時:2023年6月3日 17時