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少し光が差すだけで、他には何も温もりが感じられない無機質な場所。
「俺らの計画邪魔すんな!」
「さっきからずーっとそれじゃん」
「はあ?ちげえよ言葉のユアンズが違うんだよ」
「それユアンズじゃなくてニュアンス」
そんな中で繰り広げられるまるでコントのような取り調べ。
ニュアンスもクソも変わってねーよ。
目の前の男はどうやら闇鴉の教祖の殺害計画を企てたリーダーらしい。
他の男たちの情報によれば、彼の親戚全員が闇鴉の宗教にハマって豹変した。それを恨んで殺害しようとしたようだ。
事情は知っているが、できるだけ彼の口から聞きたい。
嘘かなんて疑っていない。ただ、彼が僕のことを信じてくれるまでことを進めたいだけだ。
それに、相談できる相手も計画の仲間数人だったんだ。同じ境遇だからこそ話せたんだろう。
俺はそんな経験は無いが、似たような経験ならある。
「なんで殺そうとしたの?」
「関係なくね?俺らのピーリングが合成しただけだし」
「ああ。君たちのフィーリングが合致したんだね」
言わないんだな。と彼の心情に少しの共感を覚えた。
言っても誰も信じてくれない。身近な大人は耳を傾けてくれないし、彼の親を変と思った子供には遠ざけられただろう。
正気じゃない奴が入ってくるだけで自分の全てが壊れてしまう。何も自分は悪くないのに。
痛いほどに、胸が締め付けられた。
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作者名:セメント紅井 | 作成日時:2023年6月3日 17時