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70(赤井秀一) ページ26
「え！今日春樹兄ちゃんお休みなのー？」
「ごめん。春樹くんは出張なんだよね」
連絡が取れないと思ったらそういうことか。
今日は寄っていくかどうか聞きたかったが連絡もつかない。それに博士がサッカーのチケットを貰ってきたからあげようと思ったのだが。
「出張、ですか」
「友人が春樹くんを貸してくれってうるさくてね。数日お助けに行ってもらってるんだよ」
「なんのお仕事なの？」
「農業の手伝いだよ。友人が骨折っちゃって若い子が欲しかったらしいんだ」
「ふうん。ありがと！」
「はーい」
坊やを連れていって正解だった。
俺が聞いてしまっては多少怪しまれたかもしれない。あいつの今のことを少ししか知らない俺にとって情報は大事だからな。
マスターには悪いがこれだけ聞いて店を後にした。マスターの少し悲しそうな顔をしていたが、それよりもAの方が心配なのだ。
坊やの手を引いて、なるべく父と息子に見えるようにしながら工藤邸への道を歩く。
「…嘘、だよね」
「だと思ったが、妙に筋の通った話でしたね。本人がマスターにそう言ったのか、上に言わされたか」
「春樹さんと一緒にサッカー観たかったんだけどな」
坊やはがっくしと肩を落とした。
坊やとAはミステリーとサッカーという共通点がある。サッカーは俺の専門外だが、ミステリーは俺がAに仕込んだ趣味だった。
「ああ、サッカーで思い出しました。春樹さんミステリーも好きですよね？」
「うん！」
「実はあれ、僕が仕込んだんですよ」
「そうなの！？」
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作者名：セメント紅井 | 作成日時：2023年6月3日 17時
