66 ページ22
その後にジンが帰ってきて、キールとはおさらばになった。
会うことは少ないだろうが、優秀な幹部だとすれば闇鴉の幹部としての接触は有り得る。組織同士が敵対してるからちょっと怖いけど。
「どこ行ってたんです?任務?」
「そんなとこだ…おい、ちょっと傷見せろ」
「え、うわっ」
ジンはベッドで仰向けになっていた俺に近づいて、バッと俺の着ている服を捲った。
包帯にはさっきよりも赤色が滲んでいる。ジワっと血の花が咲いていた。
「チッ、キールのやつ無理させやがって」
「やっぱり。痛いと思ったんですよ」
「バカかお前」
「不可抗力ですからそんな顔しないでください」
そんな顔、とはどんな顔か。よくお面で見る般若のような顔を想像すればいいと思う。
目なんか合わせただけですぐに腰が抜けそうになる。怖えよ。
「お前は動くな。俺が許可だすまで出るな」
「分かったのでその顔で言わないでください。怖すぎて涙出る」
「ガキか」
「物の例えですよ」
自分はポエム的なこと言うくせにこれは分かんないのか。それとも本気だから気づかないだけか。
ジンが許しを出すまでこの家からは出られないことには間違いなさそうだ。スマホも早く充電してマスターに休むって連絡して、それから幻舞にも報告しよう。
「ジンさん、充電器貸してください」
「お前どっちだ?AppかAndroiか」
あーそうだった。スマホって2種類あるんだった。利用率は半々といったところか。
日本の企業が作るスマホ(ONY等)はOSがAndroiだが、アメリカのAppが作るスマホのOSはまた別なのだ。だから充電器の形がどうしても異なってしまう。
つまりこれは2分の1。当たれば天国外せば地獄。
秀一はジンをパシリに使おうとしたら拳銃向けられたらしい。だからパシリに使うなんて死んでもごめんだ。
「…Appです」
「残念だったな。俺はAndroiだ」
なんてことだ!!ジンをパシリに使ってしまう!なんなんだこの罰ゲームみたいな感覚は!
いや、これは不可抗力だ、仕方ない。俺の運が悪いんじゃなくてスマホが悪い。OSを統一しない世界が悪い。
「申し訳ないですが買ってきてくれません?」
恐る恐るジンに聞いてみた。
え、怒ってる?
ジンはひとつため息をついて、俺の頭に手を置いた。
「貸しひとつだな」
そしてそのまま玄関へ向かって外へ出た。
「え?」
取り残された俺は勿論お口あんぐり案件であった。
145人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セメント紅井 | 作成日時:2023年6月3日 17時