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暗い部屋。ふかふかなベッド。
それと、香る苦々しいあの匂い。
「ゔっ」
きっとこの部屋はジンの部屋だ。
そう確信して起きあがろうとすると、脇腹に激痛が走る。まだ傷は熱を持っているみたいで、ものすごくジンジンする。
堪えながら身体を起こして、怪我をした箇所に触れると、そこにはきちんと包帯が巻かれていた。それに俺の服は着替えさせられている。
まさか前回と逆だとは。助けられたな。
周りには俺のスマホなどの貴重品が見当たらなかった。どうやら扉の向こうの部屋に置いてあるらしい。
取りに行くの面倒だなあ。いっそ呼んでしまおうか。
「ジンさーん?」
呼びかけたが応答がない。もう一度呼んでみるもやはりシン…と静まり返ってしまった。
しょうがない。幻舞への連絡もしなくちゃならないし、動くしかないか。
痛む体に鞭を打ってベッドから降りる。
「マジで痛えな...」
相変わらずだがこの痛みには慣れない。
幻舞を庇った時に俺がもう少し早く動作をこなしていれば、銃弾は掠る程度だったかもしれないのに。
歩くたびに襲う痛みに怒りを覚えながら部屋を出ると、やはり人影はないし真っ暗だ。
ジンの家だとしても誰か出入りしている可能性だってある。俺を不審がって襲う奴がいてもおかしくはない。
「ねえ、本当にいないんですか?」
「いるわよ」
やっぱり!
「!」
「おっと…すごい力ね。怪我してるのに」
床に相手を縫いつけて動きを封じる。
緊急時は痛みを感じなくなるもんだな。全然問題なく動ける。
特徴的な前髪、ツンと目尻が跳ねている大きな目。昨日見たジンの隣にいたやつにそっくりだ。
「キール」
「あら、知っているのね。ジンのお気に入りさん?」
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作者名:セメント紅井 | 作成日時:2023年6月3日 17時