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俺らがでるのを待っていた?
ふと、ジンと一瞬目があったような気がした。
隣のキールは焦ったような顔をしている。
いや、もしかしたらこのオークションにターゲットがいるのかもしれない。でもこのまま帰るのは惜しいから値段を上げてやろうってことか?
分からない。でもここで値段を上げて食いつかなければそれは十分あり得る。
「7000万」
「9500万」
何考えてんだよあいつ!
「…1億!」
俺がそう言えばジンは満足そうに引き下がった。
「い、1億!1億での落札です!」
ジン、お前は一体何をしたかったんだ?
すぐに問いただしたかったが、落札をしたらすぐに受け取る計画だ。
「どうした獺祭。顔色がすぐれないけど」
「少し人に酔ったのかもしれませんね。無事に受け取りましたし急ぎましょう」
「そう?ならいいや」
近くに停めておいたバイクへと向かうその途中だった。
ザッと目の前に数人、ナイフを持った奴らが現れた。
「はあ。人に金使わせてタダで頂くという魂胆ですか」
「すまねえな。1億の品、貰ってくぜ」
前に5人に後ろに5人。完全に道は塞がれた。
「あなた方のボスはケチですね」
「はあ!?おいっやってしまえ!」
少し挑発しただけでこのザマだ。
「いきますよ」
「言われなくても!」
暗器を巧みに扱いながら次々と相手を倒していく。
全滅させるのにそれほど時間はかからなかった。
「これで全部?」
幻舞は暗器についた血を振り払ってあたりを確認する。
俺も暗器を片付けて先へ進もうとした。
瞬間、幻舞の後ろから彼女に焦点を当てている奴が目に入った。
「!!危ない!」
すぐさま拳銃を引っ張り出して発砲するも、俺が引き金を引くのが少し遅かった。
「ぐっっ」
俺の弾は奴の急所に、そして奴の弾は俺の腹にあたった。
避けきれなかった。止血しなきゃ血が溢れるが、バイクの揺れが問題だ。
「大丈夫!?止血!」
「良いから先に行け!まずは計画が優先だ!」
「っ!!分かった」
物分かりがいい奴で助かった。
シャツでキツく縛ってもすぐに赤色に染まっていく。最悪だ。
朦朧とする意識の中でふと気がかりなことを思い出した。
あ、ジンに結局聞けなかったな
そう思った時、嗅ぎ慣れた匂いが鼻腔をくすぐった。
ジンのこと思い出したからジンの匂いがする。
なんて思いながらフッと俺の意識は無くなった。
「フッ。無茶しやがって」
「この男誰?」
「俺のお気に入りだ」
「ふうん?」
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作者名:セメント紅井 | 作成日時:2023年6月3日 17時