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Aが初めて笑顔以外の顔をした｡
そのまま沈黙を貫き続ける彼女に痺れを切らして再度口を開きかけたとき､
「興味を持ったから｡」
動揺を僅かに含んだ声でAは語り始めた｡
「孤爪くんはクラスの誰とも極力関わらないようにしてて､つまらなそうだなって思ってたんだ｡」
別につまらない訳ではないし､そもそも他人と関わるのが苦手なだけ｡けど彼女の目には俺がつまらなそうに映っていたらしい｡彼女は長い睫毛に縁取られたあの奥深い瞳を伏せながらまた言葉を紡いだ｡
「けどね､観察してる内にゲームとバレーしてる時はちょっと楽しそうな顔してるなって思った｡」
どうせ､暇潰しだから｡そう言いたかったがAの表情を見る限りそんな言葉に説得力が無いことは容易に分かった｡
「それで観察してたんだけど孤爪くんって他の人と違って上手なのに上を目指さないように見えたから､君にとっての『完璧』はどんなものなのか知りたくなった｡」
Aはただ好奇心の赴くままに俺を観察して質問しているだけだ｡きっと彼女の行動は貪欲なまでの「知りたい」という好奇心で為されている｡その無邪気な笑顔の印象通りまるで幼い子供のような人だ｡
「Aって思ってたよりも子供っぽい｡」
彼女は「えー､そう？」なんて少し拗ねたような顔をするがそこもまた子供のようで面白い｡
「孤爪くんも時々するよねワクワクした顔｡」
「なにそれ､してないし｡」
「ほらアップルパイ食べる前とかゲームを起動してる時とか｡」
「してない｡」
「してるね｡」
「してない｡」
どこかデジャブな会話を一通りしながら俺の中の赤岩Aというデータがまたアップデートされる｡
今の彼女は「よく笑う飄々としているようで子供っぽい人」かな｡
久しぶりにクラスメイトと交わす他愛もない会話に俺はどこか居心地の良さを覚えていた｡
「じゃあね､孤爪くん｡」
「じゃあね､A｡」
Aとの時間が終わる時､何故かその細い腕を掴んで離したくないなんて衝動に駆られたけど無理やり理性で押し込めて別れを告げた｡
別れてからAとまた話してみたい｡もっと知りたいとまさしく彼女のように好奇心がどんどん溢れていくばかり｡
今思えば俺はすでに彼女に毒されていたのかもしれない｡
少なくともその時から､頭の中に赤岩Aという存在が住み着いて離れなくなって､
どうしようもなくいとおしくなった｡
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マカロニ(プロフ) - りんごそばさん» コメントありがとうございます｡そう言っていただいて光栄です！ (2019年8月19日 16時) (
レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
りんごそば(プロフ) - 文が綺麗で、内容も新鮮ですっごく面白かったです！！ (2019年8月14日 10時) (レス) id: c6e1875d82 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - 夜桜伊織さん» コメントありがとうございます！運命感じていただけて光栄です！これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2019年6月18日 20時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜伊織(プロフ) - 最近倫理の授業でイデア論を知ったのでこの作品を見つけた瞬間なんか運命を感じました。習ったことを活かすってまさにこういうことなんですね、尊敬します！ (2019年6月17日 1時) (レス) id: 8d7012ae56 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ - 藤和さん» ありがとうございます｡私も様々な文章を読んで必死になりながら勉強してます｡(笑)よろしければこの作品に最後までお付き合いください。 (2019年3月12日 21時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マカロニ | 作成日時：2019年3月11日 20時
