彼女の意見 ページ3
・
「あたしを観察するなんてずいぶん物好きだね｡」
ニイッと紅い唇を三日月形につり上げてこちらを見つめる赤岩さん｡彼女はあのこちらの思考を見透かしてしまいそうなほど奥深い瞳でこちらを観察している｡
「赤岩さんだって俺を観察してるでしょ｡」
だったらお互い様だ｡そう告げると赤岩さんは相も変わらずに楽しそうな声で
「そうかもね｡」
と言うと無邪気に微笑んだ。
その顔を見て俺の中での赤岩さんへの「飄々とした掴めない人」という評価が「飄々としていてよく笑う人」に書き換えられていく。
「で､あたしに聞きたいことでもあるの？」
彼女は脱線した話を再び元のレールに引っ張ると俺を観察するのをやめて俺の目だけをじっと見てくる。
「なんで、赤岩さんは完璧なんて存在しないと思うの？」
ようやく聞きたかったことを彼女に切り出すことができて人と話すのが苦手な自分は内心、安堵したが､彼女と俺の視線が交わるとやはり少々居心地が悪くなり視線は自分の腕に落とした。
「そうだなぁ｡」
彼女は呑気そうに言うなり突然椅子から立ち上がった｡その拍子にスカートがフワリと踊った。そして芝居がかった立ち居振舞いで黒板の前まで歩みよって行った。そのわずか5秒の間、何故か俺はその姿に目を奪われた。
おもむろにチョークを掴んだ赤岩さんは何やら黒板に定規を使って三角形を描くと、俺の方に振り向いてこう問いかけた｡
「孤爪くん､この三角形は『完璧』に見える？」
彼女が指差す三角形は念入りに定規で図っただけあり見事な正三角形だ｡
「多分、そうだと思う｡」
質問の真意を考えたがやはり赤岩さんは表情一つ崩さずに微笑んでいるので彼女の思考を読み取ることは放棄して素直にそう答えると彼女はカラカラと笑って
「そうだよね｡あたしもそう思ってた｡」
俺の答えに同意しながらも「でもさ｡」とまた新しく言葉を紡ぐ。
「この完璧に見える正三角形を拡大して原子レベルで考えると細かい凹凸があったり丸みがあったりして完璧じゃないんだよね｡つまりこの三角形みたいに現実世界に『完璧』なんて在るわけない。そういう考えなんだよ｡」
まるで授業のように説明されたが不思議と普段の授業と違って眠気は起きない｡そして俺の前で読めない笑顔を浮かべるこの少女からどういうわけか視線が引き剥がせなかった。
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マカロニ(プロフ) - りんごそばさん» コメントありがとうございます｡そう言っていただいて光栄です！ (2019年8月19日 16時) (
レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
りんごそば(プロフ) - 文が綺麗で、内容も新鮮ですっごく面白かったです！！ (2019年8月14日 10時) (レス) id: c6e1875d82 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - 夜桜伊織さん» コメントありがとうございます！運命感じていただけて光栄です！これからもこの作品をよろしくお願いします！ (2019年6月18日 20時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜伊織(プロフ) - 最近倫理の授業でイデア論を知ったのでこの作品を見つけた瞬間なんか運命を感じました。習ったことを活かすってまさにこういうことなんですね、尊敬します！ (2019年6月17日 1時) (レス) id: 8d7012ae56 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ - 藤和さん» ありがとうございます｡私も様々な文章を読んで必死になりながら勉強してます｡(笑)よろしければこの作品に最後までお付き合いください。 (2019年3月12日 21時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マカロニ | 作成日時：2019年3月11日 20時
