イデア【孤爪研磨】

恋に落ちた猫 ページ13

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誰もが見とれる花のような笑顔の少女｡

目の前の彼女から放たれた言葉をゆっくり､噛み砕く｡


余裕そうな笑顔で､けど声は真剣で震えていて

Aの必死な告白が俺の耳から離れない｡



思えばあの放課後からAのことが好きだった｡

誰よりも凛とした美しさも理由の一つかも知れない｡



けど､俺はクルクルと変わる彼女の人物像が､
時折見せる子どもっぽい顔が､

何よりもその笑顔が


どうしようもなくいとおしかった｡


「俺もAが好き……｡」

やっとの思いで出た声は震えていて､小さくて｡そのくせ心臓は痛いほどバクンバクン鳴っている｡


ほんと､カッコ悪い｡


それでも俺の気持ち全部込めた精一杯の告白｡


「ほんとに？」

「ほんと｡」


そっか｡と頬を桜色に染めてはにかむような笑顔を浮かべたAは本当に嬉しそうで｡


「俺と……付き合ってください｡」


「はい｡」


告白は先を越されたからせめてこれだけでも俺から言わせて欲しかった｡


全部Aに言われるのはちょっと悔しいし｡


叶わない恋のはずだったのに｡


今俺の隣にいるのはまぎれもなくAで｡


「何泣いてるの｡」

「へへ､随分長い片想いが実ったからね｡
　ずっと研磨が好きだった｡」

まぁ、気づいてなかったけど｡と付け加えてまた涙を流す｡


“研磨”

好きな人が呼んでくれたってだけで聞き慣れた名前が嬉しくて頭の中で何回も繰り返す｡


ここで涙を拭うなんてカッコいいこと俺にはできないからとりあえずハンカチを貸しておく｡


ねえ､A｡




あの時話しかけてくれてありがとう｡


全然､完璧じゃないし特に目立っていた訳でもないのに俺を好きになってくれてありがとう｡



俺はこの先､Aの笑顔がずっと見られることを願っています｡

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