1-1.二人の秘密【納棺師】 ページ1
(自己解釈口調)
食事の時間。僕が一番苦手な時間。
人と接触するのが、僕はあまり得意ではない。
それはこの荘園に来る前から変わらないことだ。
荘園で生活をする人に攻撃的な人はいないし、
みんないい人だ。分かってる。
だけど…怖いものは怖い。
僕はいつも、食事は仲間と時間をずらして行うことにしている。
それを咎める人が居ないというのが、
この荘園で暮らす人達がどれほど善意的であるかを示しているだろう。
僕も、それに甘えてしまう。
今日もそのつもりで、決められた夕食の時間を
二回り避けて食堂へ向かったはずだったのだが。
食堂の扉をあけて最初に目に入ったのは、
テーブルの上に広げられた数々の本と 投げ出されるように置かれた食器たち。
そして、テーブルの中央で一冊の本とにらめっこをする女性の姿。
あの人は、Aさんだ。
声をかけるか否か悩む。かけるとしても、どう話しかければいいのかわからない。
Aさんはこちらに気がついていないようだし、
このままこっそり戻ろうか―――…
「あっ！いっけない…カールくんは今からご飯だよね」
気がつかれてしまった。
本から顔を上げたAさんが僕の姿を認識して慌てはじめる。
…申し訳ない。
僕はその場からすぐに去りたい気持ちでいっぱいになったが、
ぐっと堪えて食堂へ入る。
Aさんは椅子から立ち上がって、散らばった本をかき集めた。
積み重ねて山にして…キッチンの方へと運んでいく。
何をしていたんだろう。邪魔をしてしまっただろうか。
別に一食ぐらい抜いたところで死にはしないし、
夕食は食べずに寝てもいい。
「いいですよ、気を遣わなくて」
「大丈夫大丈夫！もうそろそろ移動しようと
思ってたところだったからね」
戻ってきたAさん。
さっきは気がつかなかったけど、淡い桃色のエプロンを着ていた。
「何をしていたんですか」
素朴な疑問を投げてみる。
「うんと……」
Aさんは暫し言葉を詰まらせた。
…聞かない方がいいことだったのか。
人との距離感がつかめない。難しいな。
早く部屋に戻りたい。
「荘園のみんなの口に合う料理を作りたくて…
色々と研究してたんだ。さっき抱えてった本、あれ全部レシピなの。」
「レシピ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 434人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トウコク - ストーカー話ありがとうございました...尊すぎ死んじゃう(爆散) あの、逆トリップの白黒お願いしてもいいですか...？ (2019年4月10日 0時) (
レス) id: 776fdad7d6 (このIDを非表示/違反報告)
トウコク - 初めまして、毎日無常推しとしてはこの短編集はめっちゃ目の保養...いつも読んでます、更新頑張ってください！『無常にストーカーされる夢主』をリクエストしたいのですが、大丈夫でしょうか？ (2019年2月28日 16時) (レス) id: e432d23e20 (このIDを非表示/違反報告)
黒眼鏡 - ア"ァアアア"ァ！！嬉しい！！まさか私のリクエストを書いてくださるなんて！！ありがとうございます"ぅうう！ま、またリクエストします...！(←調子に乗るな^^) (2019年2月19日 22時) (レス) id: 6c68a47d1f (このIDを非表示/違反報告)
ナ子 - 読ませていただきました。Galdさんの書く無常さんが好きです･･･画面の前で悶えてます！無理せず頑張ってください！ (2019年2月4日 11時) (レス) id: 937195e404 (このIDを非表示/違反報告)
晴天 - 続編おめでとうございます(*´∀｀*) Galdさんのかかれるテテの世界観が大好きです！ (2019年1月19日 19時) (レス) id: 5853246d58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Gald@ | 作成日時：2019年1月10日 14時
