【ヒプマイ】親友 a.k.a 恋人

癒やしを3個 ページ4

パシッ



拳を手のひらで軽く受ける音が、静かな路地裏に響き渡った。


しかし、その一撃は重い。



『良い筋してるな。
きちんと鍛えりゃ、もっと鋭いのが撃てるようになるぞ？』



衝撃を空気中に受け流していなければ、今頃俺の手のひらは



生ハムの如くペラペラになっていただろう。




……冗談抜きで。



「だ、だれだよっ！！お前ぇ！！！」



憤慨する真っ赤な顔のヤクザに問われ、少し考える仕草をする。



そして、未だにふらつく三郎くんを抱き寄せて



『ん…こいつの保護者、的な？』



と、言い放った。



そして、あの左馬刻でさえも震え上がった自慢の睨みを浴びせる。



普通に殴り合うのもいいが、できれば穏便に済ませたい。



「ひぃ！？お、覚えてやがれ三郎っっっっっっっっ！！！！」



相当効いたのか、ヤクザはブルリと震え上がって顔を真っ青に変えて


まるで悪役のような捨て台詞を吐いて、スタコラサッサと一目散に逃げ出してしまった。



……雑魚くね？？




三「あの……。」



困惑したような、不審がってるような、安堵したような、信頼したような


そんな、ぐちゃぐちゃな感情の目を向けてくる三郎くん。



そういえば、抱きしめたままだったな。


三郎くんは大人っぽいから、もしかすると気持ち悪かったのかもしれない。



若気の至りであろうもののせいで、俺に好意を寄せていた兄とは違って……。



慌てて絡めていた腕をほどき、三郎くんを自由の身にした。



『少年が無事で良かったよ。
じゃ、俺はこれで……。』



必要以上に関わることはない。


もう諦めたはずだろ？


だって…俺が関わったやつは、みんな不幸になってる。


これ以上、誰かを依存させるのは………流石に駄目だ。



三「まって、ください…。
その、せめて……お名前だけでも、教えて…欲しいです。」



クイッとおれの服の裾をつまんで斜め下を見ながらごにょにょごと話している。


そして、暗くてよく見えないが


おそらくその顔は赤い。



……三郎、お前もか。




必死に俺を呼び止める三郎くん。



その姿が、一郎と重なって



余計に思考を鈍らせる。



そして鈍った思考は、とんでもないことを口走らせた。









『家まで送ってやるよ。』

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