惚れたら負け。【第五人格】 (ページ2)

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納棺師、イソップ・カール。
私の恋人である、一応。

恋人と言っても、数週間前にたわいもないことで喧嘩して以来、言葉すら交わしていない。
果たして、恋人と言えるのかどうかも怪しかった。

でも、
「じゃあ別れよう！」
という気持ちにはならなかった。

私は、心のどこかで彼のことが好きなんだ。
そんな結論に至っても、仲直りなんて今頃できるとは思えなかった。

私と彼は、お互い素直になれないところがある。
自分で言うのも変な感じがするけれど、実際そう。
前の喧嘩だって、本当にどうでもいいことだった。
どちらかが「ごめん」と謝れていれば、すぐに終わる話だった。

でも、
最近は言葉すら交わしていないのに、会っても気まずい雰囲気になりそうだし、
私が「ごめん」と言っても、彼はそんなことどうでもいいかもしれないし、
「まだ引きずってるの？」なんて思われそうだし……。
なんて、そんなことをズルズルと考えてしまうから、謝れそうにない。

こういう時に勇気を出せないのは自分の悪いところだな、としみじみ感じる。
このまま引きずっていても解決できることじゃない、というのは既にわかっているのに。

このままじゃ、「別れる」なんて言われても納得することしかできない。

「また悩んでいるの？」

エミリー先生の声だ。
彼女は私の肩に手を置き、優しく囁いてくれた。
それに対して、「うん」なんて素っ気ない返事しかできなくて申し訳ない。
頭がパンクしそうで、すぐに返せる言葉がそれしかなかったのだ。

「いつまでも引きずってて、お互い頑固よね。すぐに謝ってしまえばよかったのに。……まあ、引きずってしまう気持ちもわかるけどね。数週間も間が空いていれば尚更」

私自身、本当にそうだと思う。
エミリー先生は、本当によくわかってくれている。
グズグズと迷っているだけ損な気もするけれど、仕方ないじゃないか。
相手がイライ君ならまだ謝れていた気もするけど。
なんて言い訳を並べて逃げようとするのも、私の悪い癖。

「また話はじっくり聞くわ。貴方のところに来たのには理由があるの。協力狩りの試合開始がもうすぐでしょ？アナウンスをお願いしに来たのよ」
『お仕事か、わざわざありがとうね。今行くよ』
「助かるわ、ありがとう」

私の悩みも大事だけど、まず優先すべきは自分の仕事。
気持ちがあまり切り替えれていないけど、今は大人しく仕事をするしかない。