検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:32,336 hit

海の魔女 ページ8

Aは城に戻って、王子が一人で海辺へ出掛けてしまってから、客人の娘とジェスチャーを交えた会話を楽しんだ。

その夜、Aは散歩から帰ってきたエリックに呼び出された。

Aはティーポットとカップをトレーに乗せて、王子の部屋へ入った。

「失礼致します・・・」

すると、そこにはエリック以外にも、二人の客人がいた。

一人は、Aにも劣らないような美しい黒髪の美女だった。

そして、なんともう一人は、逆だった銀髪で痩せこけた、エイトフットのジョーだった。

Aは、カップを多めに持ってきてよかったと、安心した。

「お茶をお持ちいたしました。お客様もどうぞごゆっくりーーー」

「お客様じゃないんだ、A」

「・・・ハイ?」

Aはポットを持ち上げながら、首を傾げた。

「彼女はーーーヴァネッサは、婚約者だよ」

当然のごとくするりと王子の口からこぼれ出た言葉に、一瞬震える手と驚きを隠そうと、Aはお茶を入れた。

「そうですか・・・グリムズビーが喜びますよ。こんな美しい方を奥様にお迎えできるのですから」

エリックの分に砂糖を入れ、Aは今までずっと黙っている美女に、笑顔で話しかけた。

「ミルクかレモン、どちらかお入れしてもよろしいですか?」

「・・・歌ってちょうだい」

「・・・ハイ?」

本日二回目の”ハイ?”である。あまりに突然のその申し出に、Aは困惑した。

「なんでもいいから・・・ジョーに聞いたのよ」

Aはエリックに意見を求めるも、エリックはぼぅっとしたまま何も言わなかった。

なので、Aは好きな歌を歌おうと背筋を正した。

「♪三日月が光るとき 海の波間に燃え上がる きれいなきれいな赤珊瑚
  新月の夜に見えるのは 貴方の心を探すため 広がり続ける 水の波紋(あと)
  満月の日に輝くは 見つけた貴方と 星の海♪」

歌い終わると、ヴァネッサは満足そうに微笑み、エイトフットは面白いというように片眉を上げた。

「・・・貴方の歌には、とてつもない力がある」

ヴァネッサの目は、さながら獲物を品定めするサメのようだった。

「いいねェ・・・エリック、この娘は私の召使としてもらうよ」

色んな人をたらい回しにされるなぁ、とAは一人自分を皮肉った。

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
31人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユラ(プロフ) - 山茶花さん» ありがとうございます!レス&更新滅茶苦茶遅くってスミマセン・・・ (2017年4月3日 11時) (レス) id: ac02456d2d (このIDを非表示/違反報告)
山茶花 - ユラさんのエイトフット好きです!頑張って! (2017年3月24日 11時) (レス) id: 33105e2b3c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユラ | 作成日時:2017年2月21日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。