海の魔女 ページ8
Aは城に戻って、王子が一人で海辺へ出掛けてしまってから、客人の娘とジェスチャーを交えた会話を楽しんだ。
その夜、Aは散歩から帰ってきたエリックに呼び出された。
Aはティーポットとカップをトレーに乗せて、王子の部屋へ入った。
「失礼致します・・・」
すると、そこにはエリック以外にも、二人の客人がいた。
一人は、Aにも劣らないような美しい黒髪の美女だった。
そして、なんともう一人は、逆だった銀髪で痩せこけた、エイトフットのジョーだった。
Aは、カップを多めに持ってきてよかったと、安心した。
「お茶をお持ちいたしました。お客様もどうぞごゆっくりーーー」
「お客様じゃないんだ、A」
「・・・ハイ?」
Aはポットを持ち上げながら、首を傾げた。
「彼女はーーーヴァネッサは、婚約者だよ」
当然のごとくするりと王子の口からこぼれ出た言葉に、一瞬震える手と驚きを隠そうと、Aはお茶を入れた。
「そうですか・・・グリムズビーが喜びますよ。こんな美しい方を奥様にお迎えできるのですから」
エリックの分に砂糖を入れ、Aは今までずっと黙っている美女に、笑顔で話しかけた。
「ミルクかレモン、どちらかお入れしてもよろしいですか?」
「・・・歌ってちょうだい」
「・・・ハイ?」
本日二回目の”ハイ?”である。あまりに突然のその申し出に、Aは困惑した。
「なんでもいいから・・・ジョーに聞いたのよ」
Aはエリックに意見を求めるも、エリックはぼぅっとしたまま何も言わなかった。
なので、Aは好きな歌を歌おうと背筋を正した。
「♪三日月が光るとき 海の波間に燃え上がる きれいなきれいな赤珊瑚
新月の夜に見えるのは 貴方の心を探すため 広がり続ける 水の
満月の日に輝くは 見つけた貴方と 星の海♪」
歌い終わると、ヴァネッサは満足そうに微笑み、エイトフットは面白いというように片眉を上げた。
「・・・貴方の歌には、とてつもない力がある」
ヴァネッサの目は、さながら獲物を品定めするサメのようだった。
「いいねェ・・・エリック、この娘は私の召使としてもらうよ」
色んな人をたらい回しにされるなぁ、とAは一人自分を皮肉った。
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ユラ(プロフ) - 山茶花さん» ありがとうございます!レス&更新滅茶苦茶遅くってスミマセン・・・ (2017年4月3日 11時) (レス) id: ac02456d2d (このIDを非表示/違反報告)
山茶花 - ユラさんのエイトフット好きです!頑張って! (2017年3月24日 11時) (レス) id: 33105e2b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユラ | 作成日時:2017年2月21日 17時