必然と偶然 ページ6
彼女と対話することは、Aにとってとても新鮮だった。
何年ぶりかの友人ができたようでもあった。
しかも、エリックはAに、休みを与えたのだ。
少女と一緒に一日ずっと出かけるらしいので、夕方には帰ってくるという条件だったが、Aはそれでも嬉しかった。
誰も来ない海辺で岩に腰掛け、読書をしながら、この間覚えた物悲しい歌を口ずさんだ。
.。o○
エイトフットのジョーは、自他共に認めるアースラの熱心な手下である。
契約書を書き、整理し、遠くまで魔法に使う材料を取りに(あるいは捕まえに)行き、契約を守れなかった者に、アースラの代わりに手を下すこともある。
これが意外と疲れる作業で、本人曰く”アースラ様はタコ使いが荒い”そうだ。
しかし彼は、アースラからの信頼も、もちろん厚かった。
そんなある日、一人の人魚が訪れた。
アリエルという、人魚の王の末娘だ。
彼女は人間の王子への恋を成就させ、陸に上がるための足をもらいに来たのだった。
なんてワケのわかンねェ理由で陸へ行くんだ、とエイトフットは鼻で笑った。
こんな馬鹿げた理由で。失敗するに決まっているのに。何故それに命をかけられるのか。
そんな疑問が頭を駆け抜けたが、エイトフットにとっては失敗した時のトリトン王の顔が見てみたいという思いのほうが、圧倒的に強かった。
しかし、波行きがおかしく、いや、雲行きが怪しくなってきた。
声が出ないアリエルなど、見向きもされないと思いきや、なんと二人で仲良く街巡りをしているのである。
しかも、一度などキスをしてしまいそうになった。
それはギリギリでフロットサムとジェットサムが邪魔をしたが、もしそれが水上でなかったならば契約が成立してしまうかもしれなかった。
それはまずい。
アースラは別の作戦を思いついたようで、エイトフットを呼び寄せた。
「王子はこの娘の声に恋に落ちているからねェ。私が人間の女になって、王子に魔法をかけるんだ。そうすれば、明日まで小娘がコイツとキスをすることはないよ」
アースラの首飾りが、鈍く光った。
「アンタも一緒に来るんだ･･･私の手助けをするんだよ。いいね?」
「･･･分かりました」
陸か、とエイトフットは一人ため息をついた。
アースラのタコ使いは、一向に良くならなさそうだった。
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ユラ(プロフ) - 山茶花さん» ありがとうございます!レス&更新滅茶苦茶遅くってスミマセン･･･ (2017年4月3日 11時) (
レス) id: ac02456d2d (このIDを非表示/違反報告)
山茶花 - ユラさんのエイトフット好きです!頑張って! (2017年3月24日 11時) (レス) id: 33105e2b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユラ | 作成日時：2017年2月21日 17時
