事の始まり ページ2
とある豊かな、海に面した美しい国で、一人の女の子が生まれた。
Aという名で、暮らしは他の同年代のことさして変わらず、ただ、人より綺麗な黒髪を持っていただけだった。
この日までは。
Aは何時もと変わらぬ、平穏な朝を迎えた。
両親とともに朝食を取り、毎年恒例の、王子の誕生祝いの祭りのために、お店の手伝いをする。
町は賑やかに歌が響き、皆踊りまわっていた。
「君も歌ってみたら?」
町の大人達は、店の番をするAにそういった。
Aは言われるがまま、聞いたことのある曲を、聞き覚えで歌い出した。
効果は歴然としていた。
他の誰が歌うよりも、顔が晴れやかになり、笑顔になり、目の前のなんでもない景色さえ美しく見えた。
そして何より、皆の心は、その歌に揺れ動いたのだ。
小さな少女の魔法の歌声は、瞬く間に小さな町を駆け巡った。
Aは色んな催し物に出て歌わなければならなくなり、時には遠くの町まで出かけることさえあった。
そんな大仕事は、小さなAには大変すぎだった。
Aは、花の美しさ、国の素晴らしさばかりを脳天気に歌い続けることに飽き飽きしていた。
少しでもいいから、暗い歌を歌ってみよう。
Aはそう思って、町中で酷く悲しげな歌を口ずさんだ。
結果は燦々たるものだった。
聞いていた人々は泣き叫び、うめき、酷い者は倒れこんだ。そして、一番近くで聞いていた両親は、気が狂ってしまったのだ。
そんな恐ろしい光景を目にした町の人々は、Aを避けるようになった。
そう聞くとなんだか町の人が残酷なように聞こえてしまうが、町の人にしてみれば、そうするしかなかったのだ。
そんな町に国王一家が通りかかり、不思議な歌声を持つ黒髪の娘を召し抱えるのは、まだまだ何年も先の事になる。
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ユラ(プロフ) - 山茶花さん» ありがとうございます!レス&更新滅茶苦茶遅くってスミマセン･･･ (2017年4月3日 11時) (
レス) id: ac02456d2d (このIDを非表示/違反報告)
山茶花 - ユラさんのエイトフット好きです!頑張って! (2017年3月24日 11時) (レス) id: 33105e2b3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユラ | 作成日時：2017年2月21日 17時
