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「おはよう、三橋くん。……そんな嫌な顔しないでよ」
私が決意した後、三橋くんはめでたく退院し登校してきた。
窓側の一番後ろの席に座る三橋くんを懐かしく思いつつも、以前のように関われないのがツラい。
挨拶しただけでこの顔だ。もしかして今の私は開久よりも嫌われてるんじゃないの?ってくらい。
「突然なんだけど、三橋くんに私を思い出してもらおうと思ってね」
「は?何言ってんだお前。知らねえ人間を思い出せるわけねーだろ」
「もう説明するのもめんどくさいし言っても信じないだろうから省くねそこは」
益々、露骨に顔を歪める三橋くん。いや結構傷つくよ。
でも笑顔だ。こっちが嫌な顔したら仲良くなれるもんもなれない。
「あ、自己紹介してなかったよね。私、名倉Aね、前みたいにAって呼んでくれていいから」
「呼ばねえよ、マジでなんなんだよお前」
「だから名倉Aだよ」
今更ながら、本当に三橋くんは私を覚えてないんだと実感する。
本当はね、悪い嘘だと思ってた。伊藤ちゃんと理子も私も、騙してるんだと思ってたの。
でも、違うんだね。嘘でも夢でもなく、三橋くんは私を忘れちゃったんだね。
「今から三橋くんと初めてあった時のこと再現してもいい?」
「なんで俺がお前の妄想に付き合わなきゃなんねーんだよ」
「……おはよう。もしかして三橋、思い出したのか?」
「伊藤くん、おはよう。いや、三橋くん本当に私のこと知らないって言うからさ思い出してもらってんの」
遅めの登校をしてきた伊藤くんが目を真ん丸くして立っていた。
そういえば、理子には言ったけど伊藤くんには言ってなかったな。
「オイ三橋。」
「んだよ、伊藤まで思い出せとかわけわかんねーこと言うんだろ」
「まあそれもあるけどさ。こうなったAちゃんは手強いぞ」
「もーまた嫌な顔する!まあ、思い出すまでガンガン行くから、覚悟してね」
満面の笑みを浮かべる私とは正反対に、うんざりした顔をする三橋くん。
悲しくもあるけど、見たことない三橋くんの色んな顔が見れて楽しい気持ちも湧いてきた。
こういうツラい時こそ楽しまなくちゃ。
三橋くんが思い出した時に、こんなこともあったよね、大変だったんだから。って言うために。
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ミカ(プロフ) - 美彩さん» 初めまして!ありがとうございます、更新は遅いですが頑張ります! (2019年8月2日 23時) (レス) id: 2be407660d (このIDを非表示/違反報告)
ミカ(プロフ) - 枕崎さん» そのお言葉だけで嬉しいです。まさか自分の作品を読んでくださってる方の中にこんなにも優しい人がいるとは思いませんでした、ありがとうございます。ゆっくりとなりますが、また更新をお楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月2日 23時) (レス) id: 2be407660d (このIDを非表示/違反報告)
美彩 - 続きがすごく楽しみです!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年8月2日 7時) (レス) id: c78fd194e0 (このIDを非表示/違反報告)
枕崎(プロフ) - 謝らないでください。まず更新して頂けることが私からすると嬉しいことなのです。作者様のペースで無理のない程度でお願い致します。私こそこんなコメントで頑張ろうだなんて思っていただけるのは幸いです。これからも応援しています。 (2019年7月29日 5時) (レス) id: 8e8712b35b (このIDを非表示/違反報告)
ミカ(プロフ) - 枕崎さん» 初めまして!更新が遅くてすみません。そして素敵なお言葉をありがとうございます!そんな風に言っていただけると頑張ろうと気力が湧いてきます!また遅くなりますがちまちまと更新していくのでよろしくお願いします! (2019年7月28日 14時) (レス) id: 2be407660d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミカ | 作成日時:2019年2月27日 0時