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茜色と群青の混ざった空をぼんやりとAは眺めていた。
自分の下した判断は正しい事なのだろうかと思いながら。



自信がなかった。
竈門炭治郎と名乗った彼の赤い瞳を思い出すと。
彼の目に浮かんだ僅かに失望したような、やるせないような瞳を思い出すと。



A「……仕事、しなきゃ」



人を喰らう生き物・鬼。
それを葬る仕事・鬼殺隊。



炭治郎「鬼は、人を平気で喰らうんだ。だから、鬼は斬らなきゃいけないんだ」



例えそれが、大切な人だろうと。



竈門炭治郎はそう言った。
けれど、Aには信じられなかった。
大切な人を斬るだなんて、到底Aには考えられなかったから。



Aは、竈門炭治郎からの言葉を頭の隅に追いやり、蕨姫花魁の部屋へ訪れた。



A「蕨姫花魁、準備を手伝いに来ました…………花魁?」



いつもは、すぐに返事が返ってくるというのに、今日は返ってこない。
不審に思ったAは襖をすっと開いた。



A「……えっ?」



そこには蕨姫花魁の姿はなかった。
明かりもついておらず、寂しげな空気だけが漂っていた。



蕨姫花魁を探しに行こうと部屋を出ようとした時、部屋に光が差し込んだ。外の方から。



驚いたAが光の差し込む方を見ると、肘掛け欄干に人が立っていた。
それは、竈門炭治郎に宇髄と呼ばれていた男だ。



宇髄「……お前は昼に話した奴か。ここの部屋の主が何処にいるか知ってるか」



A「今、探しに行くところです」



宇髄「お前は遊郭から出ろ。ここは危険だ」



そう言って、立ち去ろうとした宇髄をAは引き止めた。



A「あの!…花魁は、蕨姫花魁は鬼…なんですか?」



宇髄「鬼だろうな」



Aは宇髄の返事に、きゅっと手を握り締めて俯き一言呟いた。



A「蕨姫花魁は、帯を大切にしている。そして、今まで足抜けしたと思われてる人に、帯をあげてた」



A「……この前、足抜けした雛鶴花魁も、切見世へ行く前に帯を渡されてました」



おそらく切見世へと向かったであろう宇髄の背をAは見送った。
そして、そのまま蹲る。



A「花魁……」
Aの声は哀しみと絶望に満ちていた。

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桜餅🍎🍡🐾🐼 - 初コメですが、ずっと読ませて貰ってました!予想外の結末でしたが、凄く面白くて、自分の中でも色々想像してしまいました(〃ω〃) (3月28日 23時) (レス) @page37 id: ad99f89c7d (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - 完結お疲れ様でした、主人公さんが幸せになれて本当に良かったです…!素敵な作品をありがとうございました。 (3月26日 22時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (3月20日 13時) (レス) @page29 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
Yuuna - がんばってください!! (11月25日 18時) (レス) id: 41e2acbfbe (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すき。、。 (11月23日 10時) (レス) @page28 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しいな | 作成日時:2023年2月26日 19時

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