蕨姫花魁のお気に入りの遊女は……

雛鶴さん ページ4

ゴシゴシ

Aは廊下を雑巾で拭きながら、横で同じように床を拭く雛鶴さんを見る。

手際良く、丁寧に床は拭かれている。

真面目で掃除が上手な人ね…。








蕨姫花魁「A。雛鶴とかいう新人はどんな人だった？」

雛鶴さんの世話係に命じられて数日後、蕨姫花魁にそう聞かれた。

A「………そうですね。掃除が上手で、仕事も器用にこなす真面目な人ですよ」

蕨姫花魁「そうかい」

A「…それから感謝の気持ちを忘れない人ですね」

雛鶴さんは私が何かを教えると必ずお礼を言ってくる。

………お礼を言う必要はないのに。






雛鶴視点


天元様が鬼がいる可能性が高いという店の一つ『京極屋』に私は潜入している。

今頃、まきをや須磨もそれぞれの店に潜入している。

鬼の被害を少なくする為に、私も鬼を見つけなくちゃ。



私のお世話係となったAちゃんは少し不思議な子だ。

まだ15歳前後だろうけど、自分の意思を持っていないように思えた。

この前も、彼女にとっても先輩の遊女に、理不尽な事を怒られていたけれど、彼女は顔色一つ変えなかった。

怒る事もなく、泣く事もなく、怯える事もなく。

謝る事もなかった。

ただ、ただ無反応だった。無表情だった。

それだけなら、ただ変わった子だなと思うだけだけれど。



驚いたのはその後だ。


Aちゃんに話しかけた遊女が何人かいたけれど、彼女は全員を無視したのだ。


あれには、かなり驚いた。


どうして反応しないんだろうと。


Aちゃんには感情がないのかしら？

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