【交差編】武器職人は牙を研ぐ≪６≫【イリーガル・レア】

２：招待状 ページ2

示され、カワサキさんがもう一度よくよく画面を見る。
大写しになった女性は、視点を引いてみれば確かに写真だった。
それと重ねて置いてあるのは、つらつらと文章を並べられた招待状。

「コレクション展の招待状…？」

ジュークが読み上げた見出しに、フクメンさんが頷いた。

「その政治家が招待されたらしいなぁ…」

「そこに…その"黒吸血鬼"の剥製が出るってこと？」

ミラの呟きには私が頷きを返しておく。

『そうだね、自慢でもしたいんでしょ』

「どうする？ アクセル…」

先ほどまでの悪ノリが嘘のように、フクメンさんの問いかけは静かだった。
対策課の指揮はフクメンさんが執っており、行動の決定権は彼にあるはずだが。
それでも、この一件に関しては、優先されるのはアクセルの判断だった。

私も上司に倣ってアクセルを見やる。
この中で写真の女性の絡繰りに気付いているのは、アクセルと私、そしてフクメンさんのみ。
さすがにナヴィも知り得ないはずだ。

この一件、正直アクセルの手を煩わせるほどのものではない。
希少種犯罪であり、対策課の捕り物としては大掛かりなものになるが…。
ＤＭを送った側も送られた側も、言ってしまえば大した人物ではない。

ただ吸血鬼が絡んでいる。
アクセルの手を煩わせずとも、フクメンさんと私で解決可能な事柄で。
故に"王"の判断を仰ぐ。

彼が動かないのであれば、私たちで対処しよう。
そういう思惑で、フクメンさんと並んでアクセルを見やる。

と、アクセルは細く息を吐いてからこちらに目線を流してきた。

「フクメンよ…まったくの愚問だな。行くに決まっているではないか」

まるで気負わずに。
自ら動くと宣言したアクセル。

希少種犯罪とはすべからく胸くそ悪いものだが。
吸血鬼が絡むとなると、私たちはどうしても平静でいられないことがある。
それであってなお、常と変わらぬ振る舞いを通すアクセルに。
私とフクメンさんも、そっと肩の力を抜いた。

抜いたついでに調子を取り戻したフクメンさんは、上司らしく鼻を鳴らした。

「だったら…全員ドレスアップしないとな！」

『えっ』

「へ？」

３：ドレスコード→←【交差】１：黒き髪の吸血鬼

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