【番外／短編】武器職人は牙を研ぐ【イリーガル・レア】

(中編) ページ6

「で、これを巻いていく」

閉じるように二つ折りにして形をならしたあと、くるくると端から巻かれていく。
フィルター側に隙間が生じないようきっちり巻くので、自然とコーンの形になるらしい。

「別に普通の円筒にも巻けるんだがな。オレはこっちが好みなだけだ」

そう言って、フィルターを下にしてトントンと何度かテーブルに当てている。
細長い漏斗(ろうと)のような綺麗な円錐形になった。

『その動きは？』

「これは葉の隙間を詰めてんだよ。あんまスカスカだと火の点きが悪ぃんだ」

『へー…』

ある程度詰めたところで、開いた上の先端をつまんでねじる。
手持ち花火の先っぽのような遊び紙になった。

「これで完成な」

『そこ燃えやすそう』

「着火部分じゃねーぞ」

『え、そうなの？』

「シャグが落ちないようにしているだけだ。吸う時ここは切り取る」

『はー…、なんかすごいね…』

初めて手巻き煙草を作るところを見た。
兄貴は至って簡単そうにやっていたが、慣れるまでは結構難しそうに思える。
特にシャグの量調整と巻き始めの部分が。

出来上がった煙草を手に取って見せてもらった。
市販の既製品ではない、ちょっと面白い形。

手巻きなのが凄く格好良くて。
でもこの遊び紙のせいか煙草はちょっと可愛い。

『これ、吸ってみたいなぁ』

「ああ？」

ぽつりと呟くと、途端に兄貴に怖い顔をされた。

『え、そんな睨んでくる？』

材料費高いの？
そう聞くと、バカ言え、と返された。

「市販よりも安く済む…ってそこじゃねーよ」

ガキがナマ言ってんじゃねぇ、と頭をはたかれる。

『いやあの私成人してるんですけど』

「はぁ？」

『え？』

え、兄貴ってば私のこといくつだと思ってたの？

『ていうか多分兄貴より年上…』

言って気づいた。
そういや兄貴はアクセルのこともガキ呼ばわりしていた。

「お前ら見た目が若すぎんだよ」

『兄貴が貫録ありすぎなんだよ』

納得はしてくれたらしいが、兄貴はまだ腑に落ちない顔だ。

「つってもなぁ…年齢だけじゃねーよ。お前、煙草吸ったことあんのか」

『うーん、めっちゃ昔に試しに吸ったことあるだけかな』

「癖にならなかったんならそれが一番だろ」

『えー』

喫煙者でありながら、いや、だからこそ、だろうか。
兄貴は真剣に煙草を止めてきた。
しみじみ兄貴は兄貴である。

『でも手巻き…いいなぁ…』

(後編)→←【ガルゴ】煙草はハタチになってから（前編）【職人番外】

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