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(後編) ページ14

言われるがままに顔を近づけて気づいた。
どうやらただの雪の塊ではないらしい。

丸っこく押し固められ、尖った緑の葉っぱが二本突き刺さっている。
赤い実も二つくっついていた。

『何これ?』

「雪うさぎ。見たいつってたろ」

『あっ、これがそうなんだ…!』

受け取った雪うさぎはひんやり冷たい。
手のひらにおさまるくらいのそれは、確かに言われてみれば兎に似ていた。

『もっとリアルなのかと思ってた』

「おま…、雪像じゃねーんだから」

『うん、思ってたよりもっと可愛い』

素直に頷くと、男が満足そうに笑った。
嬉しげに喉奥を鳴らす。

「わざわざ作ってやったんだ、大事にしろよー?」

『ありがとう、葵雅』

「おっ、兎野郎からついに昇格か?」

『雪うさぎ野郎的な』

「オイこら」

『うそうそ、冗談だよ。ホントに嬉しい』

葵雅、ともう一度口にした。
あをが。馴染みのない発音で、つい兎野郎などと言ってしまうけれど。
とても綺麗な名前だと思う。

ひんやりした雪うさぎ。
冷たくなった葵雅の指。

『ホントにありがとね』

「おう」

葵雅が破顔する。
無邪気で嬉しそうな笑顔。
たまに見せる子どもみたいな表情を向けられるのは、決して悪い気はしない。

むしろ嬉しいなんて。
言ってやらないけどね。

『ところでこれ、溶けたりしないの?』

つーか雪山から持って帰ってきたのか。
雪うさぎをつつきながら尋ねると、あっさり首を振られる。

「いや、溶けねーよ」

『雪って溶けないもんだっけ?』

「それ、氷銀狐の雪かっぱらって作ったから」

『………うん?』

「当分溶けないぜ」

『あ、そうなんだ…』

まぁ溶けないならそれでいいか。
可愛いので枕元に飾っておくことにする。

私が雪うさぎを置いている間に、葵雅は私の布団に潜り込んでいた。

『待って、ちょっと待とう葵雅』

「あん?」

『私もまだ二度寝するんですけど』

「一緒に寝りゃあいいじゃねーか」

ほれ、と葵雅の横をぽんぽんと示される。
誰の布団だと思ってんだ。

――まぁ、いいか。

雪うさぎに免じて、今日くらいはあたたかさを共有しよう。
そう決めて、私は葵雅の横に潜り込んだ。

2014.06.02.(10時頃)
―――――
本誌で名前が出た記念に!
まだ一人称が不明なので違う可能性あったり。
うん、彼からはどうしても兎のイメージが抜けない(´∀`)

【葵雅/フレイア】星遊び(前編)【師団構成員】→←【叉鬼の葵雅】どっちにしろ兎(前編)【師団構成員】



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満月もなか(プロフ) - ミドリさん» こんな兄貴が欲しい(*´∀`*)原作での再登場が待ち遠しいですw (2014年4月6日 5時) (レス) id: 4ee75b096c (このIDを非表示/違反報告)
ミドリ(プロフ) - 満月もなかさん» フー!!( ☆∀☆)かっきょいいゼ兄貴 (2014年4月5日 10時) (レス) id: bbb6656106 (このIDを非表示/違反報告)
満月もなか(プロフ) - ミドリさん» 兄貴は絶対悪いこと本気で止めてくれるタイプですよね…!きゃー兄貴かっこいい!!(*´∀`*) (2014年4月5日 7時) (レス) id: 4ee75b096c (このIDを非表示/違反報告)
ミドリ(プロフ) - 満月もなかさん» いえいえ!兄貴がやさしぃよ!!(*´∀`)きゃー!!かっきょいい!!( ☆∀☆) (2014年4月3日 21時) (レス) id: bbb6656106 (このIDを非表示/違反報告)
満月もなか(プロフ) - ミドリさん» そうなんですよミラの夢書きたくて!一般市民な男夢主だったんですけど名前変換を入れる場所がなかったw ふおぉ嬉しいお言葉ありがとうございます!(*´∀`) (2014年4月3日 4時) (携帯から) (レス) id: 86c3fb12ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:満月もなか | 作成日時:2014年4月1日 13時

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