【番外／短編】武器職人は牙を研ぐ【イリーガル・レア】

【狩人師団】ある粗野なハンターの話【師団構成員】 ページ12

黒吸血鬼の王を狩る、という大掛かりな作戦が開始され。
私たち市長直属狩人師団(ハンター・ディヴィジョン・マーダック)から数名が出向いているワケだが。

『……ヒマ』

「だーよねぇ。まだ手出ししちゃダメなのかなー」

『突入命令下ってないし、まだでしょ』

腰につけた兎の足を弄りながら、同じ師団のメンバーがため息をついた。
私もため息で返す。
と、背に二丁背負っていた猟銃の片方を向けられた。

「お前、ヒマなら相手しろよ」

『冗談は兎だけにしてよ。任務中の私闘は禁止でしょうが』

「兎ディスんなよ！」

『二倍幸運になるんじゃね、つって兎ごと前足つけるアンタの頭をディスってんですぅ』

「あんだと！」

『やるかコラ！』

思い切り喧嘩を売ってしまってから、あ、私闘禁止だった、と思い出した。
私も兎野郎を笑えないな。

『やめやめ。市長の折檻を食らう気はないよ私は』

「チッ、つまんねーな」

舌打ちされたがスルーする。
私は兎野郎より大人だからね！
…でもヒマだなぁ。

『ウィズシヴァーが中担当だったよね』

「あのスカシ野郎か」

『今どうなってんだろ』

手元の端末を操作し、師団それぞれがつけている小さな通信端末をこちらから繋げる。
ノイズと共に、会場の中の音声が聞こえてきた。

当然ながら、師団のウィズシヴァーの声が一番よく聞こえる。

「アイツ今なんかしてんの？」

『んー、シヴァ家の説明してるっぽい』

瞬間、ウィズシヴァーの次の声を端末が拾った。
低い声が聞こえる。

――まるでカレーを作るように、毎日銀を溶かし加工してきたよ。

『……今さ、カレーって言わなかった？』

「カレーって聞こえたなぁ」

ぶっは、と二人で盛大に吹き出した。

「なんでカレーなんだよ！」

『カレーの登場が突然すぎて！』

しかも声色的に、どう考えてもあの真顔で言い放っているのだ。
笑いが抑えられない。

「アイツ、堅物さが一周回ってただの面白いヤツになってんじゃねーか！」

『あ、待って待って、王サマもなんか言ってる』

――レモン汁でも目にかけられた方が効くのではないか？

『レモン汁！』

「レモン汁！」

もうダメだ、完全にツボに入った。
二人で腹を抱えてひぃひぃ笑い転げる。

「まじやべぇ、中を志願すりゃよかった！」

『ホントだよ！ 王サマの実物が見てみたいわ』

笑いすぎて目尻に滲んだ涙をぬぐう。
ああ、なんて素敵な王サマだろう。
邂逅が待ち遠しい。

『早く狩りたいなぁ』

2014.05.01.(1時頃)

【叉鬼の葵雅】どっちにしろ兎（前編）【師団構成員】→←【アクセル／若】まさかの逆トリップ【現代人】

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