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【アクセル】王と職人の出会い(前編)【武器職人番外】 ページ1

それはまだ、吸血鬼たちが貴族の栄華を極めていたころ。
はるかな昔の話だ。

思えば、彼と私はまだまだ顔見知り程度でしかなかった。

『はぁ…舞踏会?』

「ウム」

『ちょっと得意げに私に言われても関係ないよね』

儀礼用の細工を施した長剣を、とある種族の王城に納めに行った時。
そこの主である彼が「舞踏会を開く」といきなり言い放ってきた。

「お前も参加したらいい」

『はぁ?』

思わず素の声が出る。
参加しろって。
何言ってんだこの人。いや、人じゃなかったな。

『嫌だ』

きっぱり断ると、ム、と眉根を寄せられた。

「何故だ」

『そんな暇あったら鍛冶の修練したいから』

そう、私の技術はまだまだ一族の先達(せんだつ)には遠く及ばない。
貴族の戯れとやらに付き合っている暇があったら、少しでも鍛冶や研ぎの腕を磨きたかった。

理由を告げると、意外なことに主は生真面目に考え込む。
…意外だ。

口調こそ砕けたものを使うことを許されているが、彼は私の一族にとっては"上客"である。
多少強めに発言されたら、私たちは彼の言うことを聞かねばならない。

が、彼がそんな素振りを見せたことは一度もない。
ただの一度も、だ。

今も、しばらく考え込んだあと、彼はゆるりと頷いてみせた。

「そうだな。お前の都合を考えていなかった」

『……考えてくれるの?』

問いかけると、不思議そうな顔をされる。

「当然だ。オレは、お前たちに力を借りている身だぞ。無理は言わん」

『……ありがとう』

最近一族が新たに契約を結んだ、とある人間の領主とはかなりの違いだ。
好き放題注文をつけ、無理ばかり言ってくるせいで、一族の主力職人はみんなそちらに掛かりきりになっている。

だからこそ私がこの城に来ることになったのだ。
すでに完成していた作品を納めるだけだったから。

そのおかげで、数回顔を合わせる程度だった主とかつてない長さで会話をしている。
黒い豪奢(ごうしゃ)な服を揺らし、彼はウームと唸った。

「しかし…そうか。お前はしばらく暇ではないのだな」

『なんで私の暇を気にするワケ?』

「祝おうと思っていた」

『…は?』

何を、と聞く前に続けられる。

「最近一人前になったんだろう。この前の短刀はお前が鍛錬から研ぎまでやったと聞いてるぞ」

『なん…で、そんなこと知って…』

(後編)→



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満月もなか(プロフ) - ミドリさん» こんな兄貴が欲しい(*´∀`*)原作での再登場が待ち遠しいですw (2014年4月6日 5時) (レス) id: 4ee75b096c (このIDを非表示/違反報告)
ミドリ(プロフ) - 満月もなかさん» フー!!( ☆∀☆)かっきょいいゼ兄貴 (2014年4月5日 10時) (レス) id: bbb6656106 (このIDを非表示/違反報告)
満月もなか(プロフ) - ミドリさん» 兄貴は絶対悪いこと本気で止めてくれるタイプですよね…!きゃー兄貴かっこいい!!(*´∀`*) (2014年4月5日 7時) (レス) id: 4ee75b096c (このIDを非表示/違反報告)
ミドリ(プロフ) - 満月もなかさん» いえいえ!兄貴がやさしぃよ!!(*´∀`)きゃー!!かっきょいい!!( ☆∀☆) (2014年4月3日 21時) (レス) id: bbb6656106 (このIDを非表示/違反報告)
満月もなか(プロフ) - ミドリさん» そうなんですよミラの夢書きたくて!一般市民な男夢主だったんですけど名前変換を入れる場所がなかったw ふおぉ嬉しいお言葉ありがとうございます!(*´∀`) (2014年4月3日 4時) (携帯から) (レス) id: 86c3fb12ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:満月もなか | 作成日時:2014年4月1日 13時

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