broken emotion VI

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「侑李のせいで傷ついてる人なんていないよ」

知「でも、今回ひかが…」

「違う。私が言ってるのはそういう事じゃない」

知「何が違うのさ…」

「光さんは侑李を“守った”の。
守ることは怪我をするかもしれないけど、そんなの傷ついたって言わないよ
人は、“守れなかった”ことに1番傷つくんだよ
だから、必死になって大切な人を守るの。｣

伊「てか、怪我したら知念が治してくれるんでしょ？」


いつの間にか着替えて後ろに立っていた慧くん

黒のスキニーパンツに少し大きめの水色の半そでTシャツ

そして白の薄いパーカーを羽織っている


伊「俺の怪我を治せんのは知念だけだからね」


ニコッと笑う彼は1番よく知っている

大切な人を守れなかった悲しみを

守れなかったという傷の深さを

だから彼は医学を勉強したんだ

その傷を彼自身で治せるように

誰かにその傷を負わせないために


知「…仕方ないなぁ、僕が伊野ちゃんの怪我を治してあげるよ」

伊「俺だけ？」

知「…Aちゃんも」

「え…？あ、ありがと」

知「…うん」


そのまま視線をスマホに向ける侑李はきっと照れてるんだ


知「Aちゃん」

「ん？」

知「ありがと…」

「…うん、いつでも話聞くからね？」

知「うん。話すから…だから、Aちゃんも話してね？」

「…えっ、」

知「辛いこととかさ、あるでしょ？」


想像してなかった言葉を言われて戸惑う私

辛いこと…


「今は…大丈夫。とっても楽しいよ」


辛いことなんてない

…訳がない

だけど今は、私が皆に寄り添いたいから

私の事はまた今度


知「…てか、用意しないの？」

「あ、」

伊「知念が引き止めたんでしょ？w」

知「…違うし。スマホ取ってってAに言っただけだし」

伊「やっぱり引き止めてんじゃ…え？」

知「なに」

伊「え、今…」

「呼び捨てでよんだ…」


侑李が私のことをAって呼んだ

ずっとちゃん付けだったのに


知「…嫌？」

「え、いや、じゃ…ないよ？」

伊「知念が呼び捨てで呼ぶなんて珍し」

知「伊野ちゃんはうるさい」

伊「こっわ…」

知「え？」

伊「なんでもないです」


侑李の顔は赤かった

でもそれは慧くんにいじられたから

きっとこれから「A」って呼んでくれるんだろうな

侑李は…私にちゃんと心を開いてくれたのかな




伊「知念、心の底から心を開いてる人にしか呼び捨てで呼ばないから良かったね(ﾎﾞｿｯ」

知「A、用意。慧、ハウス」

伊「「はい…」」

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