ガラス越しのあなたに触れるまで【^ら^】

chapter.0 ハジマリ ページ1

真っ白で無機質な部屋で、私はベッドの上で膝を抱えていた。その時、一つの明るい機械音と共に重い扉が開く。その奥から現れたのは、毎日見ているであろう“彼”＿＿＿らっだぁ。


rd「はよ〜今日はどぉ？元気？」


『…』


顔を覗きこまれるが顔を逸らして知らない素振りを見せる。そして僅かに縦に頷いてみせた。


rd「え〜ほんとに？今日も顔色わっるいけど」


自分でもよく分からないが、もしかしたら体調が悪いのかもしれない。でも、そうだったとしても絶対彼にそれを言ったりはしない。


らっだぁは手に持っているクリップボードに何やら書き込んだあと、数枚ペラペラと捲って何か(多分予定表だろう)を確認した。


rd「…ん〜今日は予定ないみたいだし俺も暇だからいっぱい話そ？」


私は黙って布団を被った。もう嗅ぎ慣れてしまった薬品のつんとした匂いが鼻を掠めた。


rd「えっ無視？流石に傷つくよ？？」


少し罪悪感が出てきて布団から軽く顔を覗かせるとらっだぁはぱあっと嬉しそうに微笑んだ。


rd「…うん。やっぱAは優しいなー」


そうやって優しく笑う彼が温かくて、少し眩しく感じてきて軽く目だけを逸らした。“A”と呼ばれるようになったのは随分前からだったが、未だに少しむず痒く感じる。


らっだぁは私に向かって片手を伸ばす。その手は私に触れる目の前で止まった。


私とらっだぁの間には決して割ることの出来ない一枚の分厚いガラスがある。



彼＿＿＿らっだぁは、この研究所の研究員。そして私は＿＿＿














＿＿＿この研究所の実験体。

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