【イナギャラ】偽りメルシーpartⅢ (ページ46)

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第１３４話ページ46

合宿場に帰ってくるなり、メンバーの歓迎はあまり無かった。

…そりゃそうだ。

ここ最近ずっと単独行動ばっか。
質問の答えも、ふわふわで曖昧で。

試合でもパスもあまり出さずに自分自ら強行突破。

ハァ、と小さくため息を吐き出し、自室に向かって歩きだした。

＿＿＿視界が、暗がり始めた。

…ここまで強い恐怖を感じたことはなかった。

自分でも、何をしてるのか解らない。

求めいたハズの"条件"が、消えていっているのは確かだ。

それでも。

それでもいい。

私の手だけが汚れれば。

＿＿＿それは、きっと正しい選択、のはずだ。

ロビーを抜け、いよいよそれぞれの部屋が表れ始める廊下に一歩足を踏み込んだその時。

黒く染まりかけた世界に、小さな光が指した。

(これ、この前にも…！)

右肩を引かれ、その衝動に私の体も右回りして
自動ドアの方へ向かい合う形になった。

そこには、笑いながら右手でサッカーボールを抱えるキャプテンがいた。

「あははっ、やっとAの表情が変わった！」

…その一言で、私は驚いているのを顔に出していたことに気がついた。

慌てて目の前のやつを睨み付けるように口を結び、眉を潜めた。

『あ…っ。
＿＿＿何、構って欲しいなら同中の奴等に頼めば良いデショ？』

「それじゃあ呼び止めた理由がないだろ？」

そう言って、キャプテンはボールを両手で掴み、私の前へ突き出した。

「"サッカー、やろうぜ！"」

その笑い方が、円堂さんのあの笑顔と重なって見えた。