【イナギャラ】偽りメルシーpartⅢ (ページ40)

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第１２８話ページ40

空になった皿を重ね、おばちゃんにお盆を返すのと同時にスクイズを受け取る。

食堂を見回すも、そこには真名部の姿は見当たらない。

それが解り、小さくため息を吐くと後頭部を掻こうと左手を持ってきたその時。

＿＿＿バシッ。

「灰崎さん、頭の傷口また開いちゃうよ？」

『…瞬木』

そっと腕を下ろさせるその右手は、少し震えて見えて。

普段の自分なら振り払うハズなのに、今だけは出来なかった。

＿＿どうやって離れよう。
そんな思いが頭を駆け巡る中で、一つの足音が耳に入ってきた。

「瞬木…とA？どうかしたの？」

『＿＿＿何でもないから。
気にすんなよ、キャプテン』

そう言えば、私の腕を掴んでいた瞬木の手が離れたことに気がついた私は、そのまま食堂の出口へ向かう。

【＿＿＿あーァ、また逃げちゃうってね？】

いつぞやかの声が聞こえ、はたりと足を止めた。

『…解らないや』

「？…A？」

【…どうしたい？傭兵として残るの？
それとも＿＿＿あっちいっちゃう？】

…話しかけて、こないでよ。

星章学園の時に聞いたあの声が、私の耳を通り抜けた。

…嫌だ、聞きたくない。

ギュッと目を強く瞑れば、私の左腕を誰かが引いた。

そこには。

『…私？』