【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ48)

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第８９話ページ48

シャムシールのキックオフで試合再開。

駆け込んでくる奴からボールを奪おうとしてとして、ボールに足をかけたその時。

『…え？』

自分の体に大きな衝撃が走ったと思えば、そのまま強引に後ろへ飛ばされる。

『…ッ？！』
「A！？」

(んだよ、これ…！こんなのファールじゃねェか)

何とか足で着地するも、衝撃が重くその場で膝をついて止まった。
足に違和感を感じて下を見れば、そこには白いラインがあって。

(…あの一撃で、端まで飛ばすのか？！)

ハッして前を向けば、相手の選手が私をマークしていた。

『どけよ、凡人』
「えー。さっきアンタさァ、"邪魔してやんよ！"っていったじゃん？だから今度は俺らが邪魔してやるってわけ！」

＿＿そこで立ってて見てな。

そうニヤニヤしながら、目の前に立つ相手は吐き捨てるかのように言う。

(…現在進行形で今自分のチームは勝っているのに、どうしてコイツは眉を潜めながら言うワケ？)

＿＿負けて国に帰ったら身分を下げられるとか？

＿＿それとも…いや、それは重すぎか。

何にせよ、なにかを背負っているのは確かのはずだ。

…なんで、そんなに苦しそうな顔をするんだよ。
アンタも、私も。

お互い、未来が見えないからか？
お互い、この先を描けないからか？

...あぁ、苦しい。

何も、昔が思い出せなくて。
監督の放つ言葉全てが理解できなくて。

───私がここに立つ理由って、なんだったっけ。