【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ45)

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第８６話ページ45

「大丈夫か」
『…う、誰だ』

呼び掛けに応答しながら目を開けていく。

ぼんやりとする意識の中、いつの間にか横たわっていた体の上半身をどうにかして起こす。

「…起きたか」

声がした方に目だけやれば、そこには剣城が座っていた。
未だにはっきりしないままボーッとしていると、カチャリ、と少し高い音が耳を掠る。

「…食えるか」

彼の手元を見ると、そこにはキャベツとそれに添えられた豚のしょうが焼きが乗っかった皿と茶碗に詰め込まれた十六穀米があるお盆があった。

『…食う』

そう告げると、剣城はお盆においてあった箸をつかって豚肉にキャベツを一山ぶん巻いて…。

＿＿＿え、巻いて？！

『ちょ、アンタ何を…むぐっ』

一気に覚醒した私は、魚のように口をパクパクさせる。
それを見た剣城は、御構い無しにタイミングよく箸の先にあるものを私の口にぶちこんだ。

「お味はいかが？」
『…美味しい』

噛みきって飲み込んだあと、ぶっきらぼうに答えれば、またキャベツをくるんだ肉を私の口に入れる。

こんなん、自分で食う。なんて言えねェな…。

(つーか、何でコイツこんなに嬉しそうなんだよ)

『…、随分手慣れてんなァ？』
「兄が病人だからな。仕方ない」

そう剣城は答えると、空になった食器を下げに行くために立ち上がった。

『おばちゃんに美味しかったって言ってくれ』

背中を向ける剣城に向けた物は、ワンテンポ遅れの二つ返事で返された。