【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ44)

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第８５話ページ44

キャプテンが帰ってきたのは、19時を過ぎた夜だった。

メンバーが詳細を訪ねれば、監督が身許引き受け人となり、久坂は解放されたのだとか。

今度はキャプテンが私達に何をしていたのかを聞いてきた。

それに対し、真名部達が代表して久坂を調べて解ったことを伝えていく。
＿＿船木コーチから伝えられた伝言も一緒に。

内容に驚いたキャプテンは、船木コーチの元へ向かおうとするが、それを神童さんが制す。

だが、キャプテンは何も言わずにそれを振り切ってこの場から離れてしまった。

『…ムカつく』

「どうしたの、灰崎さん」

遠退いていったキャプテンの背中に投げ掛けた言葉は本人に届きやせず、
代わりに右となりに座っていた瞬木に回収された。

声に反応するように、小さく目配せをして、そっと目を瞑った。

…暗闇に映るのは、数時間前に見えたあの男の顔。

『なんでもない。…部屋に戻る』

そういって、私は席を立ち上がって自室に繋がる廊下で足を運ぶ。

"あの男"は誰なんだよ。
あの人は何を望んでいた?

『…っお兄ちゃん、私はどうすればいい？』

その不安と呼応するように、足の歩幅は狭くなるのと同時に右目が痛み。
右目の痛みは次第に頭にも広がっていく。

自室に繋がる廊下で足を止め、壁に寄りかかった。

耐えるのにも限界でも来たのか、意識が少しずつ薄らぎ、体が傾いて。
次に感じたのは冷たい床ではなく、暖かい何か。

「…灰崎」

閉じていく視界の中でどこか懐かしく感じる人がいた。