【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ43)

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第８４話ページ43

『ただいま』

「…！Aっ」

自動ドアを潜り抜けると、すぐさまにさくらが目の前まで駆け寄ってきた。

彼女がいたであろう方をすこしだけ横目で見てみると、メンバーの殆どがジャージ姿でそれぞれ椅子に座って険しい表情を作っていた。

『…誰かやらかしたのか？』

そう呟けば、目の前のやつはもっと顔を強張らせた。

その顔は、どこかの面影を持っていた。

(…知ってる。私は、目の前で)

＿＿＿＿どうして？どうやって知った？

ビリッ

突然、右目が痛んだ。
それは悟られないように、静かに眉を潜めて視線をそらせることで誤魔化すことにした。

目の前に映った切羽詰まった男らしき顔を掻き消すように、一度だけ目をつぶり、野咲とまた向かい合った。

＿＿現状を整理しよう。
…今ここいないのは、キャプテンと久坂。

俯くような人がいるのはきっと。

『…警察の世話になったのか、あのヤンキー』
「…っどうしよう、このチームが無くなっちゃったら私」

そういって、野咲は私に前から抱きついてきた。

震えるその背中に腕を回すかを躊躇して空中に止まったその左手を見ることもなく、結局私はただ背中を優しく叩くだけ。

『…ジャージに着替えてくる』

そう言えば、野咲は私から離れた。

歩き始めた私の右肩はすこしだけ湿っていた。