【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ38)

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第７９話ページ38

『放…せよ』

本来ならすらすらと出てくるその言葉は、掠れ気味でしか喉が鳴らなかった。

「そりゃ痛いだろ」

語りかけるように剣城は淡々としていった。

「お前、包帯の巻き方間違えてんぞ」
「『＿＿＿は？』」

「…終わったぞ」
『すごい手際良すぎねーか』
「以前こんなことをたくさんやる知り合いがいてな」
『白竜とか？』「…そんなところ」

そう答えられたのと同時に、救急箱を閉める音が耳に入った。

なんか茶を濁らされた感があるがそこまで深く突っ込むのは良くないだろうと思い、言及するのは止めておく。

背中越しに剣城にお礼を言った後、脇に脱ぎ捨てたTシャツを被り、袖を通し終えた。

それから立ち上がり、床で胡座をかいて座る剣城にすれ違うように部屋を出ていこうとしたその時。

「なぁ、灰崎」

部屋の主に呼ばれ、私は立ち止まって顔だけ振り返った。

『…んだよ、またなんか要望でもあるワケ？』

そう訪ねても無言を貫き通す剣城に何故か嫌気がさしていく。

(…言いたいことははっきり言えば良いだろうがよォ。)

小さな呆れ声を上げ、『じゃあな』、と言いかけたそのとき。

「他に怪我はないか」
『アンタので全部やってもらったっつーの。
じゃーな、お休み』

彼の事はもうこれ以上気には止めないで出ていくのが賢明だ。