【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ34)

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第７５話ページ34

自分の口許が上がっているのが嫌でも解った。

ぶっ飛びそうな意識を何とかして保ちながら、キャプテンの竜巻と向かい合う。

『そんな間抜け風、消してやんよ！！
"マッドジャグラー"！』

「う、うわぁぁぁあぁ！？」

竜巻の中にいたキャプテンは、コートの真ん中から約１m先ほど吹っ飛ばされた。

うつ伏せに叩きつけられたキャプテンは、腕を使いながらゆっくり起き上がる。
そんなキャプテンをみて、神童さんは奴の名前を呼ぶ。

流石にやり過ぎたか、と思い、奴のそばまで近より、左手を差し伸べた。

「あーあ。Aからボールを奪えると思ったのになー」
『やっぱりアンタ、目的忘れてんじゃねェか』

握られたキャプテンの手を掴みながら引き上げると、すぐ側で芝生を踏みつける音が耳に入った。

手を離してそちらに振り向けば、私を見下ろす監督がいた。

その姿に、何故か私は謎の恐怖に心が支配された。

「…ベンチにいる話だった筈だ」
『い、今すぐ戻ります…！』

「走るな。早歩きでだ」『ｳｨｯｽ』

ベンチに座ると、右目がまたいつかのときのようにチクリと痛みがさした。
…もちろん、顔には出さないように耐える。

監督は戻ったものの、取り敢えず先に資料作成を進めることにした。

と言っても、フィールドに戻ることは許されなかった。

「まさか、貴方があの人の指示から背くだなんて」
『…うっ』

(見張り役にみのり置いていくんかい、あのジジィ…！)