【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ30)

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第７１話ページ30

次の日。

肩の包帯は取れないけど、そのまま練習に参加する。
横をチラリと盗み見れば、こちらを睨む野咲の姿が目に入った。

…あらかたプレーを控えろとでも言いたいんだろうか。だが、お断りだ。

今日の練習内容は、試合をより深く意識するためにオフェンスとディフェンスに別れてやっていくスタイルらしい。

「神童さんはディフェンスの方へ入ってください」
「…解った」

「俺とさくらと久坂、それからAはFWの瞬木たちと一緒に攻撃だ！」
「任せて！」

「…松風」

私も二つ返事をしようとしたその時。
練習を見に来たらしい監督がキャプテンを呼んだ。

「…灰崎はベンチに座らせておけ」
「は、は...えぇ？！」

何で、などと言おうとするキャプテンの横を通りすぎて、監督は私の目の前に立つ。
奴の黒いサングラスには、眉間にほんの少しだけシワを寄せた私が映っていた。

ポン、と右肩に何かが叩かれ、それを見ると。
そこにはボードがあった。

『…ボード？』
「チームの記録をとっておけ。
＿＿＿以上だ。練習を始めろ」

その声に、皆(といっても、神童さんと剣城を除く)はざわめいたが、そそくさと配置についていく。

それを見た私も、皆に背を向けて歩き始める。
ベンチに座るために監督の横を行こうとしたその時。

監督の低い声が私の耳を通り抜けていった。