【イナギャラ】偽りメルシーpartⅡ (ページ15)

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第５６話ページ15

『雇われる理由、ねェ？
で、私が、ノーっていったらどうするワケ？』

「べつに。細かい内容までは聞きやしない」

そういう剣城の目は、まっすぐ私を貫いていた。だが、私は少し顔を伏せる。

＿＿あいつの名字通り、剣のようにまっすぐ伸びてくるのが痛くて。

慌てて逃げるように、次の声を絞り出した。

『───で、話はそれだけ？』

なんて問いかけて、顔をあげると剣城はそれ以上はなにも言いやしなかった。
それどころか、ソイツは私から視線を左へずらしていたのだ。

___もういいや、黙っているのは肯定で捕らえることにしとこうか。

『じゃあ、グッナイ』

そう言って、椅子から立ち上がると私はゆっくりと部屋を出てくためにドアへ近づいていった。

扉が開いたとき、チラリと剣城を見たが、こちらを見続ける様子はなく、真っ直ぐ私が座っていたところをじっと見続けていた。

だが、それに応答することもなく、私は自分の部屋へ向かっていく。

部屋へ入ろうとしたその時、突然右腕を捕まれた。
間抜けな声を聞こえたときにはもう遅し。

気がつけば、私は野咲の部屋にぶちこまれていた。

…出ていく寸前に、顔をもう一度あげた剣城が苦しそうな顔でこちらに手を伸ばそうと腕を上げていたのには知らないままで。