稲荷崎の問題児ちゃん2【ハイキュー】

問題児93 ページ48

どこからか声がする。


それは心地のいい声で。



母｢A起きや〜｣


｢おかぁ！｣



また小さい頃の夢を見てるんだと分かった。


まだ舌っ足らずでとてとてと歩きながら母に近づく。


そんなAの頭を撫でて母は微笑んでくれた。


まだ弟妹もいない1人の時で、Aに付きっきりで世話をしてくれていた。



母｢今日はおとんはお仕事忙しいから、2人で出かけるで？｣


｢お出かけ！？

どこ行くん！たのちみ！｣


母｢ふふっ、せやなぁ…

遊園地でも行こか？｣


｢ゆーえんち！？やたぁ！｣



母の足に抱きついて、喜んで…


この時まではこの幸せが当たり前だと思ってた。


ずっとこれから先も変わらず、いつも一緒にいれるのだと信じて疑わなかった。


小さい頃のAは飛びっきりの笑顔で、元気にはしゃいでて…


そんな自分を見て、いいな…なんてもう思わない。


これから先、絶望が待っているんだから。


…いや、それは違うか。


ある日突然母の帰りが遅くなって、急に1人になって静かな家で母と父の帰りを待ってた。


結斗が産まれて母の帰りが遅いことは変わらなかったけれど、寂しさは半減した。


…少し結斗に母を取られた嫉妬もしたけれど。


そこから耀が産まれて、自分みたいな思いをさせたくないと思った。


…守らなくちゃと思った。


天音と愛音が産まれた時は双子だからか余計可愛く思えて、癒しになって。


…双子を見ると辛いことも忘れて幸せになれた。


絶望ばかりじゃなかった。


たくさんの幸せに囲まれた。


そのためなら生きがいだった陸上だって辞めれるんだから______









ゆらゆらと揺られる。


微かに声がする。


聞いたことのある声。



｢きや…………お……｣



なんて…言って…




侑｢起きや、A｣


｢…んぅ？｣



侑(んぅ…ってなんや、んぅって！！！

可愛すぎやろ！！！

…って俺は何思っとん！？)



｢あ…みや、あつむ？｣


侑｢せや、そろそろ起きなあいつら帰ってくんとちゃうんか？｣



あいつらとは誰のことか。


寝ぼけた頭で考え答えにたどり着く前に玄関の扉が開いた音がした。


ドタドタと駆け上がってくる音と、数秒後には部屋の扉が開いた。


そして、部屋にAだけでは無いことが分かると固まった。



｢…おかえり、耀｣


侑｢…久しゅうな、耀くん｣



耀は理解が出来てない顔をしていた。

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