59話 ページ13
「おっやっとでおったわ」
治のその声はいつもと何も変わらない様子で僕はもしかしたら他の人たちから何も聞いていないのかもしれないとほんの少し期待をした
「急に電話ってなにかあったの?」
「あーいや、それはなぁ」
少し言いにくそうにしている侑に、僕は部活前のこと、部活を休んだことを言われるのかも知れないと思った。
そして指が震えているのに気が付き、思い切り握りしめる
(大丈夫、何も怖くない)
そう自分自身に言い聞かせる
「Aが嫌なら言う必要はないんやけど知りたいんや。否定なんかせいへん。嫌いにもならへん!力になりたいんや!」
「辛いときは人を頼っていいって小学生でも知ってるよ」
侑と角名の言葉を聞いた僕は無意識に胸のあたりを強く握っていた
この胸の中に終い押し込んでいた小さな灯火のような思いを、溢れ出さないように気付かれないように隠していた。
けれどその反面、風に吹かれないように、雨に濡れないように、消えてしまわないようにそっと、ずっと抱きしめていた
あふれるギリギリだった思いはいつも抑えるのに必死だったのに彼らの言葉を聞いて一気に大きく燃え上がり隠すことが困難になった
「悪いけど、話すことなんてなにもない」
気がつくと普段の家とかわらない学校のときよりもワントーン低い声が出ていた
怒ってるわけではない。ただ、笑って誤魔化すことが今の僕にはできなかった。そんな余裕はどこにもなかった
(だってもし、伝えたら…)
伝えてしまったならばこのままじゃいられなくなるかも知れない。今までの努力も全て無駄になるかもしれない
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香恋(プロフ) - Uさん» コメントありがとうございます!!そう言ってもらえてすごく嬉しいです!時々よくわからない表現が出てくるかもしれませんが今後ともぜひこの小説を楽しんで読んでもらえたら嬉しいです! (2022年10月24日 22時) (レス) id: fa5d44cc5a (このIDを非表示/違反報告)
U - 主くんの消えてしまいそうでありながらも逃げることができないという状況そのものや、心理描写が儚すぎて思わずコメントしてしまいました…!この作品ほど続きや終わりが気になるものに出会えたのは初めてです!素敵な作品を作ってくださりありがとうございます!!! (2022年10月24日 20時) (レス) id: 84c1c08764 (このIDを非表示/違反報告)
香恋(プロフ) - ウリンさん» ありがとうございます!そう言ってもらえて凄く嬉しいです!!ほぼ毎日更新できるように頑張ります! (2022年10月2日 22時) (レス) @page28 id: fa5d44cc5a (このIDを非表示/違反報告)
ウリン(プロフ) - さっ最高です…香恋さんの書く心情描写がリアル過ぎて物語に簡単に入り込めます…応援してます!更新ありがとうございます! (2022年10月2日 21時) (レス) id: 34bb7b30de (このIDを非表示/違反報告)
香恋(プロフ) - さーさん» コメントありがとうございます、そう言ってもらえてとても嬉しいです!!できる限り毎日更新できるように頑張るりますね (2022年9月17日 16時) (レス) id: fa5d44cc5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:歌恋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/suikahqd/
作成日時:2022年9月8日 23時