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「悪かった」
厳しいセキュリティを抜けた作業室、ソファに座らされた途端、わたしの目の前でユンギさんは頭を下げた。困惑して言葉の出ないわたしを他所に、ユンギさんは続ける。
「昨日、…悲しませるつもりはなかった。今日ジニヒョンから怒られて、勘違いされてそうだったから誤解を解きたかった」
「……誤解？」
「ああ、隣座ってもいい？」
少しだけ柔らかい雰囲気になったユンギさんに安心したわたしは、こくりと頷いてからソファの端に寄った。ユンギさんが空いたところに座って、ソファが深く沈む。
「…昨日の夜、ジニヒョンに呼び出されて店に行ったらもうヒョンはいなくて、部屋に入ったら潰れたAがいた」
「……恥ずかしい」
「ユンギさん、って言いながらガバガバ酒飲んでてビックリしたよ。俺が来たことも気づいてなさそうだったから、しばらく見守ってたけどそのうちに寝た」
「あ、…運んでくれたの？」
「さすがにAくらいは持ち上げられる」
今、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしい。だって泥酔してたわたしはユンギさんの名前を呼んでいたみたいだし、それに、寝てしまったわたしをユンギさんは抱っこしてくれたらしいから。恥ずかしい、恥ずかしすぎて、死にそう。
「久しぶりに会ったのにそんな姿見せちゃってごめんなさい……」
「ああ違う、そうじゃない」
「…？」
「可愛かったから平気だ」
「……え、と」
ユンギさんはこっちを見て、柔らかい瞳を向けた。
「冷たくして悪かった。それは、危機感のないAが心配でイラつきかけてたっていうか。…俺だからよかったけど、簡単に男の車に乗せられてたらダメだろ」
「……心配？」
「そう、心配。だから酔い潰れるのは、俺が迎えに行ける時だけにして」
悪戯っぽくユンギさんが微笑む。予想外の言葉と、目の前のユンギさんの笑顔があまりにも愛おしくてわたしは固まった。
(ダメ、やっぱりユンギさんのこと好き)
言葉より先に、気持ちが優先してしまう。
「ユンギさん」
勇気をだしてユンギさんの腕に、自分の手のひらを置いた。驚いたようにわたしの顔を覗き込むユンギさんに、また胸がキュンと疼いて。
「……ユンギさんに会いたいから、また潰れてもいい？」
数秒間。今度はユンギさんが固まる番だった。目を丸くしてから「ふは」と吹き出すと、くしゃくしゃの笑顔でユンギさんはわたしの手を握り返した。
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作者名：ユ | 作成日時：2021年9月6日 12時
