Kilig【YG】 (ページ1)

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終演後のアナウンスが流れ、会場内にいたお客さんがぞろぞろと退場していく。その波がいくらか落ち着いたところでわたしも席を立った。
所謂関係者席に座っていたわたしは、他のお客さんのように駅には向かわず、そのまま近くのスタッフさんに声をかける。

「あの、すみません」

ちらりとパスを見せる。スタッフさんは一瞬だけ驚いたような顔を見せてから「ご案内いたします」と言ってわたしを連れて行ってくれた。

忙しなくスタッフさんが走り回っている道を抜け、控え室と書かれた扉の前に到着した。
コンコン、とスタッフさんがノックをし、「お客様です」と声を掛けるとその扉が開く。

「はい、……A！」
「ジンくん！」
「久しぶりだね、おいでおいで」

久方振りに会った兄、ジンくんがわたしを出迎えてくれた。シャワーを浴びたのかメイクをしていない状態でくしゃりと顔を緩ませると、わたしの腕を引いて部屋の中に入れてくれる。

部屋の中にはジンくんと、数人のスタッフさんがいた。わたしは軽く会釈をしてからジンくんに促されるがままソファへ座る。

「コンサートおつかれさま」
「ありがとう、感想じっくり聞きたいところなんだけど、オッパ片付けがまだ残ってるんだ」
「ほんと？じゃあ帰ろうか？」
「やあ、Aが時間あるならここで待ってて。全部終わったらすぐ来るからご飯でも行こうか」

ジンくんの提案に頷いてから、部屋を出ていくジンくんを見送る。バタバタと忙しそうなスタッフさんのいる中で一人ソファに座っているのは申し訳なかったが、やれることもないのでじっと待つことにした。

それから少し経ったとき、ぽんぽんと肩を叩かれて。驚いて振り返ると、テヒョンくんが立っていて。

「わ、」
「Aちゃん？久しぶりだよね、大きくなっててビックリした、いま何歳？」
「あ、二十歳です、お久しぶりです！」
「わー、それは僕も大人になってるはずだ」

テヒョンくんはわたしが小さいときもよく遊んでくれて、ジンくんのコンサートに招待される度に楽屋で仲良くしてくれていた。あのときは自分も学生だったし、テヒョンくんの話を聞くのがとっても楽しみだったけど、数年ぶりの再会に流石に緊張してしまう。

「またゆっくり話そうね、Aちゃんの最近の話も聞きたい」

もうあの時より比べ物にならないくらいの人気者になったのに、変わらず接してくれることが嬉しい。嬉しそうに頷いたわたしにテヒョンくんも満足気に頷いてくれた。