19冊目 ページ20
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窶れた顔してドアから登場した彼は、雨晒しに遭った様な弱り果てた姿で眉間を押さえ
深く溜め息を吐いて受動的に蕎麦の丼も両手で受け取る。
彼の手に包まれたのは中央に卵が鎮座する月見蕎麦、軽口を叩けば普段なら埃すら立てずに視線で黙らされるが
完全に舐め腐っている僕に対しても、彼は特に我関さずの態度で炬燵の中に潜り込んでは死んだ目で此方を見詰めた。
おい、世話係…保護対象者が泣いてんぞ
『…そう言えばマイキー君って、今何処に?』
「シラネ、鶴蝶に教えて貰え」
不意に気に留まった不在の人物を探すの僕に、淑やかで綺麗な風貌の割には形振り構わず必死で麺を啜っていた九井さんが応える。
唇の真ん中から中途半端に飛び出る蕎麦の切れ端が、仕方のないぐらい可愛くて
つい癖でうっかりセクハラ紛いの言葉を口走ってしまいそうになったものの、心の中だけに留めておき
一応、念押しとして便宜上の了解を述べては恨めし気に彼を少し睨み付けた。
当たり前だけどやはり反社では風通しがかなり悪いらしい
組織の中で唯一風通しが良いのはきっと、彼らに制裁を加えられた亡骸だけだとさ。
御託を連々と並べながらも眼鏡を外す鶴蝶さんの所に向かい、内心中指を立てつつ何時も通り貼り付けた笑顔で彼にマイキー君の居場所を伺った。
すると、
「あぁ、えーっと…
確か執務室に籠ってる筈だ、飯は多分食べないと思うが」
『マジですか、
冷凍庫に入ってたタイ焼きでも天ぷらにして持ってこうと思ってたのに…』
「良かったじゃねぇか、56されずに済むぞ」
「天ぷらハラスメントはやめてやれ」
何やら野次も次々と飛んでくるが、殆ど無視する様に部屋の扉を潜り抜けて廊下へ出る。
後で鶴蝶さんにフランクフルトを咥えさせよう、なんて不貞な妄想を抱きつつ疲弊し切ってていとおかしな彼を頭に浮かべては頬を緩ませた。
今度の新刊は堅物眼鏡受け即堕ちモノだな…
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反社のアジトに居る、そんな事実が実感として突きつけられたら
嬉しくなるよね、ヲタだもの。
次第に爛々と上がる気分を抑え切れず、成人男性でキツいとは頭では分かっててもスキップで移動し始めてしまう。
倫理観とか危機感とか既視感とか知らない、僕には萌さえあれば良い
勝手に自己完結して、悟りを開いた直後に目的の部屋らしき扉にノックを3回して勝手に入った。
「あ゛…?
ああ、Aチャンいいとこに来たね」
…死んだ?
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わいt - いつになったら更新してくれるんですか!楽しみすぎて死ぬって!! (7月27日 22時) (レス) @page35 id: 258f12dfbe (このIDを非表示/違反報告)
乾燥(プロフ) - くっ...好みすぎて...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ無理しない程度に毎秒更新待ってますぬ... (2023年1月1日 18時) (レス) @page35 id: c00320f8c9 (このIDを非表示/違反報告)
寝ん子(プロフ) - 莉夢#梵天の信者さん» ありがとうございます!あわわ、神がおるww貴方様の作品も本当に大好きです。 (2022年10月19日 8時) (レス) id: 9e9a5a7301 (このIDを非表示/違反報告)
寝ん子(プロフ) - 雪の兎さん» ありがとうございます!これからも更新頑張ります(*^^*) (2022年10月19日 8時) (レス) id: 9e9a5a7301 (このIDを非表示/違反報告)
莉夢#梵天の信者(プロフ) - あぁ、、、好きです、、、(*‘ω‘ *)最高。 (2022年9月24日 16時) (レス) @page19 id: 9e38cf74ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寝ん子 | 作成日時:2022年9月14日 7時