顔"は"好きです。【凪誠士郎】

+ 凪と階段 ページ7

"


「Aさ、俺のこと考えて実行委員保留にしたでしょ」


休み時間、階段でゲームをするという凪について行くと、ゲームがひと段落したらしい凪がそう話しかけてきた。


『え、どうしたの急に』

「いーから、質問」

『……まぁ、ちょっとは考えたけど』

「ふーん」


素直に答えると、少し嬉し気な声を漏らす凪。

ちょっと可愛いなぁなんて思いつつ、凪に実行委員の確認をする。


『で、結局実行委員、やるの?』

「んー……Aがやるならやる」

『私断れない性格だし、指名されちゃったし、やるつもり』

「じゃーやる。めんどくさいけど」


そう言って私の方に向けていた顔をゲームへと戻す。

気だるげだが、少し拗ねている……というか、不満げというか。そんな表情をしている。

他の人は気付かないであろう凪の感情の変化が感じ取れるようになってきたのを実感して、少し嬉しくなる自分がいる。

……って、ダメだよ。凪への恋心は、ずっと前に捨てたじゃん。

なんでまた、戻ってくるのかなぁ……。


頭を振って、その気持ちを振り払う。

いや、捨てたんだ。捨てたはずなんだ。

だから戻ってきてなんて、ないよ。恋心は生きてないもの。


頭の中でまたもや意味不明な言い訳をしていると、凪がまた話題を振ってきた。


「そういえば。Aって好きな人いる?」

『……え、いないけど。急にどうしたの?』

「んー……いや、聞きたくなっただけ。なんでもない」


そう言って手元のスマホに目線を戻す凪。

ふと思い立って、凪に質問を返そうとしたその時。


キーン コーン カーン コーン


授業開始のチャイムが鳴った。


『「やば」』


二人で声を揃えて立ち上がる……も、次の授業内容を思い出してまた階段に座りなおした。


『次、確か美術だったっけ』

「……行かなくていっか」

『同意』


そう、美術は私も凪もそこまで好きではないのだ。

というかむしろ、嫌いな部類なのである。


今日は、私が初めて授業をサボった日になった。


その後、放送で公開呼び出しされた私達は、先生にこってり叱られた。

でもまぁ、成績は私も凪も悪くないし、先生も何とも言えない顔してたんだけどね。


"

+ 凪と体育祭実行委員会 2→←+ 凪と体育祭実行委員会

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す