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「もしも〜し?」

呂律すら回っていない百合に、Aは逆に明るい声で言う。

『百合さん?おはようございます、よく眠れたようですね?』

声の主がわかり、今の状況を理解した百合。顔がサーッと青くなるのが目に見える。

「あ、え、えーと、Aさん?お、おはようございます…」

動揺しまくっている百合に、言い訳の余地を与えず、Aは続ける。

『ねえ百合さん?今は何時かご存じで?』

「エ〜ッと、じゅ、10時25分です」

『じゃあ待ち合わせの時刻はいつかしら?』

「10時に駅前集合です…」

『あら、よくわかってるじゃない。じゃあ…』

一段と声を低くして、Aは言う。

『百合の家から駅まで15分。30分あげるから急いで来てくださる?__言い訳は不要だよ』

「はいぃ!」

電話がきれると、二人に向き直り、微笑みながらスマホを返す。

『ありがと、夏実。30分位したら来るはずだから付近のお店でも回ろう?』

けろりと元に戻すAはすごいと思う。と後日、二人は語った。

フラフラと辺りを散策していると、大慌てで百合がやってきた。

「ハーハー、おまだぜじまじだ…」

先ほど電話をきってから20分しか経っていない。頑張ったようだ。

「お疲れ」と百合に声をかける三人。

息を調える百合に、Aは尋ねる。

『で?今日はどこに行く予定なの?』

「フー…。えっと、あそこ!」

指を指した先には、大型ショッピングモール。

「買い物して、時間があればどっか他のとこも行こーよ!」

楽しそうに言う百合。

「他のとこって?」

尋ねる伊織。

「カラオケ!映画!ボウリング!あとは、」

指で数えながら次々とあげていく夏実。

『行きたいとこがたくさんあるのね、わかったから一回落ち着こうか』

なだめるA。

四人で、お店に向かった。


━◈━◈━◈━◈━


店中は冷たい北風も通らず、暖房が効いて暖かかった。

どれくらい経っただろうか。

昼食をとって、色々なお店を回って、たくさん買い物して、買い食いして。

楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。

気がつけば、もう4時を回ろうとしていた。冬は日が落ちるのが早い。買い物もキリがついたところだったので、このまま帰ることになった。

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作者名:七瀬月華 | 作成日時:2024年2月7日 17時

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