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『本当に良いのですか？』
会計を済ませ、店から出てきた青城の四人と共に帰路に着く中、私は及川先輩に聞いた。前では百合と夏実は花巻先輩、松川先輩と、伊織は岩泉先輩と話している。
「いいのいいの！女の子は甘えときなって」
ニコニコと笑って及川先輩は言う。先輩はそう言うけれど、申し訳なく思う。だから、でも、と口を開こうとすると、先輩は足を止めて、私の唇に人差し指をそっと当て、言葉を言わせない。あれ、今、私は何をされてる？理解した途端、顔が赤くなるのがわかった。冬だから寒いはずなのに、なんだか顔が熱い。
「いいから。ちょっとくらい格好つけさせてよ」
さっきみたいな笑顔じゃなくて、いつにも増して真剣な目をして言うものだから、頷くしかなかった。
「うん、いいこいいこ」
指を離して、そのまま私の頭を優しく、そっと撫でる。どうしよう。こんなこと馴れてないから恥ずかしい。顔があげられない。いつも女の人に囲まれてるだけあって、すごく馴れてる。一体何人の女の人が心を撃ち抜かれたのかな。
「あれ、置いてかれちゃう。華奈ちゃん…いや、Aちゃん、行こっか」
先に歩いていく皆の方を見て先輩は言う。違う。そこじゃない。そこじゃなくて。私が驚いてる間にも及川先輩は行ってしまう。ついていかないと。
『及川先輩、名前が…』
歩きながら先輩に言う。なんで？どうして？
「何言ってるの、違わないでしょ？キミは華奈ちゃんじゃない。烏野の片桐Aちゃんだ」
「俺も気づいたのはついさっきだけどね」と先輩は苦笑いしながら言う。どうして気づいたのだろう。お店の中でも、Aとは一回も言われてないのに。
「なんで？って顔してるね。店の外で話してるのがちょっと聞こえただけだよ。学校が烏野ってのもヒントみたいなもんかな」
さすが青城のセッターと言うべきか。すごいなぁ。感心せざるを得ない。そんなことを思ってると、先輩は「それに、」と言う。どうかしたのかな。
「その服装もメイクもよく似合ってるよ。すごい可愛い」
『ありがとう、ございます…』
声がしぼむ。私はまた、顔が赤くなるのを感じた。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2024年2月7日 17時
