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十分ほど歩いただろうか。だんだん各自の家も近くなってくる。そこで、月島がいきなり振り返ってきて聞いてきた。
｢先輩、さっきケーキ四つくらい買ってましたよね、誰と食べるんですか？｣
｢えっツッキー、片桐先輩と会ってたの!?｣
と驚く山口に、
｢そうだよ。見てないの？｣
と軽く答えると、彼はAにもう一度聞いてくる。
山口は気がつかなかったらしい。どうやら一年バカの相手をしていたそうだ。
彼らはAよりもほんの少し前にいるが、山口は180近く、月島に関しては190近くの身長があるため、 離れているのに見上げないといけないとは一体全体どう言うことだろう。 ましてや相手は一年生。年下のクセに生意気である。高身長って、うらやましい。
『別に。なぜ教えないといけないの？月島だってショートケーキ買ってたじゃない。好きなの？意外』
月島は一瞬虚をつかれたようにぎょっとしたが、すぐに立て直す。答えたのは、月島ではなく山口だが。
｢そうですよ、ツッキーはショートケーキが好きなんです！意外ですよね！｣
｢うるさい山口｣
｢ごめんツッキー！｣
このやり取りを見るのは何回目だろうか。百合が見たら飛んで喜ぶだろう。
｢え、先輩ケーキ買ってたんすか｣
お前もか、と心のなかでつっこみつつ、さてどうしようか考えていると、前方にいたはずの伊織がそばにいることに気がついた。
｢面白そうなこと話してるから来ちゃった♪｣
『来ちゃった♪じゃないよ。別に面白くもなんともなくない？』
そういうAに、伊織はいやいやいやと首を横に振る。
｢だって気になるじゃん？Aがケーキいっぱい買ってたのは事実だし？｣
そう言われてしまうとなんとも返せなくなるAをよそに、伊織は楽しそうだった。
誰とでもいいじゃない、と内心Aは思っているが、伊織まで来てしまうと撒こうにも撒けない。なので、正直に話す決意をした。
『はぁ……全部一人で食べるけど？』
なにか？とでも言うような目で月島を見上げる。
彼らは大層びっくりしていた。
｢エ？先輩ケーキ四つくらい買ってましたよね？全部一人で？｣
｢ケーキ四つを一人でって……｣
｢そんなに甘いものが好きなんすか?｣
｢おじいちゃんたちに買ったんじゃないの？｣
上から、月島、山口、影山、伊織である。ケーキ四つ。つまり、約半ホールだ。
甘いものが好きだからと言って、 半ホールはくどくないだろうか？そう、四人は思った。
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作者名：七瀬月華 | 作成日時：2024年2月7日 17時
